「脳からスマホを直接操作する装置」2020年に臨床試験開始へ 一部では疑問の声も

脳からスマホを直接操作する装置、開発される

 米Neuralink社は7月16日、脳から直接モバイルのタイピングや操作を行う装置の開発を行う計画を発表した。人体での臨床試験は、2020年中に開始の予定だ。

驚きの仕組み、障がい者が手を使わずに携帯使用を実現

 同社は、映画『アイアンマン』のモデルとなった実業家兼エンジニアのイーロン・マスク氏が出資し、創設された会社だ。今回開発することを発表した装置は、次のような仕組みとなっている。頭蓋骨に直径2mmの穴をあけ、ミシンの様なロボットにより装置をインストール。頭蓋骨内部では、髪の毛よりも細い、幅約4~6マイクロメートルの糸状のワイヤー1000本が情報を頭蓋骨の表面にフィットした受信機(チップ)に伝え、そのセンサーから、Blueboothで耳の後ろにあるリンクと呼ばれるウェアラブル・コンピューターに情報を中継し、スマートフォンに繋がるというもの。

 現在は、ワイヤーで脳に繋がる小さなプロセッサを開発中。Neuralinkのマックス・ホダック社長によると、わずかなトレーニングで携帯のカーソルとキーボードを操作できるようになるそうで、身体障害を持つ人々にとっては、とりわけ素晴らしいイノベーションだ。The Next Webはこのことを「イーロン・マスクのNeuralink、脳からiPhoneに直接打ち込む」と報じた(https://thenextweb.com/artificial-intelligence/2019/07/17/elon-musks-neuralink-wants-you-to-type-on-your-iphone-using-your-brain/)。

「人間にポジティブな効果」だが、一部では疑問視する声も

 イーロン・マスクはこの技術について「脳に装着するものなので、大きなものは避けたいと思います。インターフェイスはワイヤレスですので、頭部にワイヤーが飛び出しているということはありません。これは、とても重要なことです」とコメント。彼は以前、人工知能(AI)が人間に危害を加える可能性に言及していたが、この新たなプロジェクトは、AIが人間に対し、ポジティブな効果をもたらすことを意図しているという。

 ヒューマン・コンピューター・インプラントは、GoogleやFacebookも研究を進めている分野だが、脳から直接情報が伝達することについて、顧客がテクノロジー企業を本当に信用してよいか専門家が疑問視していることをCNNは伝えた。

 Futurum Researchの主席アナリストで『Human/Machine』の著者ダニエル・ニューマン氏は「脳データを大企業に委ねることには、社会である程度、違和感が生じるでしょう。この方向性について、安心して信じてもよいという根拠はありません」と指摘。プライバシー・インターナショナルのフレデリケ・カルテウナー氏は「脳データの収集は、人々を大きなリスクにさらします。誰がそのデータにアクセスするのか。第三者と共有されるのか。人々は自分のデータを管理する必要があります」と警戒する。

 実際に、イーロン・マスク氏がCEOを務める電気自動車メーカーのTeslaも以前、データ漏えいの不祥事に苦しめられたことがある(https://edition.cnn.com/2019/07/17/tech/elon-musk-neuralink-brain-implant/index.html)。

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