アメリカによるイランへの経済制裁は『LoL』にまで ゲームは政争の道具になってしまうのか?
日本などのタンカーが、6月13日に中東のホルムズ海峡で攻撃され、20日にはアメリカの無人偵察機がイランの精鋭部隊「イスラム革命防衛隊」に撃墜されたことを受け、アメリカのトランプ大統領が一時攻撃を承認するなど、一触即発の状態となっている中東情勢。
アメリカ政府は経済制裁を発動し、イランに対してあらゆる圧力をかけているが、その対象がなんと世界的なゲーム『League of Legends(リーグ・オブ・レジェンド:LoL)』にまで及んでいることがわかった。
イランのプレイヤーが窮状訴える
海外のeスポーツ系メディア『Dot Esports』は、イランと同国に協力的な立場をとるシリアで、「アメリカの法令により、LoLがブロックされている」と報じた(参考:https://dotesports.com/league-of-legends/news/us-government-blocks-league-in-syria-and-iran)。
これは、オンライン上でイランとシリアの複数のプレイヤーがその窮状を訴え、明らかになったものだという。ゲームに接続しようとすると「アメリカの法令により、あなたの国のプレイヤーは現在、League of Legendsにアクセスできません。この制限は、アメリカ政府の変更によるものですので、解除されることになった際は、またのご利用を楽しみにしております」という、同ゲームの運営元である〈Riot Games〉からのメッセージが表示される。
VPN(Virtual Private Network)という抜け道を経由してログインしプレイすることも可能だが、これらの地域では高額で、『League of Legends』の場合はゲームの機能性も著しく低下するそうだ。
アメリカがイラン追加経済制裁を発動
その背景には、6月24日にアメリカが発表した、イランに対する追加経済制裁がある。アメリカはイラン最高指導者アリー・ハメネイ師ら上層部8名の個人も制裁対象に指定したものの、イランの市民には寄り添う方針を常々伝えてきた。
しかし、今回はゲームへのアクセスが遮断され、政治とは無縁の市民に影響が及んでいる。これにより市民のイラン政権に対する不満が募る可能性もあるが、それは等しく、ゲームという娯楽すら奪おうとするアメリカへの反感を生むリスクもはらんでいる。
このことについて、政治・カルチャー系ニュースサイト『Slate』では、〈Riot Games〉関係者による「アメリカの制裁対象のサービスに該当すると解釈しています」というコメントを掲載している(参考:https://slate.com/technology/2019/06/league-of-legends-riot-games-iran-syria.html)。また、同記事内では、アメリカのシンクタンク・ブルッキングス研究所で外交政策を専門とするリチャード・ネフュー氏へのメールインタビューで、制裁の対象について「個人的な情報技術にはいくつかの例外があるものの、実際は通信技術などに限られており、市民社会が世界の他の地域とつながるコミュニケーションに限定されています」といった回答が得られたことを紹介した。