テクノロジーは音楽の“見せ方”をどう変える? 2nd Functionクリエイター座談会

2nd Functionクリエイター座談会

 「テクノロジーがクリエイターにとってのインスピレーションになる」

福澤恭氏(BRDG/VRDG)

ーーそもそもこのお2人の中で生まれたものからスタートしている、といっても過言ではないですね。

2ndF:言われてみればそうですね。その後から映像作家としてのキャリアがスタートして、ファッション周りからクリエイティブディレクターとして関わるようになって。で、福澤さんはVJという括りではあるんですが、もう少しテクノロジー寄りの方というか。音楽に合わせてリアルタイムで生成していく映像を手がけていて、個人的にも大ファンだったんです。

福澤:もともと『BRDG』『VRDG+H』というオーディオビジュアルのイベント・コミュニティを主宰していて、映像作品やコンサート映像などをプロデュースしていました。

2ndF:知り合いを介して紹介してもらった当初は、画面に収まる“平面の映像”をお願いしてたんですよ。ただ、お願いするほうの僕らに画面の概念がなくなっちゃって(笑)。

ーー“画面の概念”とは?

2ndF:VRやプロジェクションマッピングって、16:9や4:3という長方形から映像を解放したという重要な側面があります。長方形でいかに綺麗な映像を撮れるのかというのは、映像監督の大切な仕事の一つだったわけですが、そこに対する概念がなくなっちゃった時に、3Dに強いクリエイターが必要になるわけです。僕はもともと映像を作っていたわけですが、そうなった時には何をしたら面白いかを考えるクリエイティブディレクターとして関わって、福澤さんにお願いするほうがクオリティーが上がるなと思って。というか、僕にはもはやつくれないんです。

福澤:それまではイベントの動画を公開したり、ミュージシャンと映像作家のオーディオビジュアルありきのMVを自主制作しアップしていたんですが、2nd Functionで仕事をするようになって、空間的で画角に収まらないことばっかりやってるので、良い意味で大きな変化がありました。

2ndF:僕らも感覚がガラッと変わっちゃったので、平面の映像をやるときも捉え方が全然違うんですよね。だからカット割りとかも気にならなくなっちゃって。僕は音に合わせてカットを変えるのが得意だったし、今までは映像作品の強みってカットによって瞬間移動できる気持ち良さがあったと思うんです。でも、いまは移動の過程を見せるほうが面白い、というくらいになってきて。昔の僕らだったら作れなかったと思うんですよね。

ーーその捉え方は面白いですね。

2ndF:例えばヘリコプターを使った空撮って今までもあったと思うんですけど、ドローンが出てきたことによってああいう映像が増えたじゃないですか。それって、VRというものがあったうえで、ドローンという機材が登場したことで「あ、VRみたいなことがリアルでできる」と映像作家が画角から解放されたから広まった部分もあると思っていて。そういうのが、エンターテックの面白いところですね。要はテクノロジーがクリエイターにとってのインスピレーションになるんですよ。「動くレーザーがあります」という時に、クリエイター視点から「こう使える」というのを提案して、そのアイデアをチームで膨らませ、相互作用でモノづくりからコトづくりになっていく。だからこそ、佐藤さんから提案があった時に、最高の作品が完成すると思っていて。

ーーテクノロジー側からの提案があってクリエイティブなアートが作られていく、というのは確かにトレンドです。

武田:もともとそういう仕事じゃなかったのに、みんなの神経や感性が繋がって今まで考えられなかったことができるようになったり、断片的に浮かんでいるものを渡せるようになった結果、それぞれのクリエイティブが爆発するというか。

ーーこれからのクリエイターは『モノからコトを作る』という話をしていましたが、まさにみなさんがそのフェーズに入ってきているんですね。その越境してる感覚って、自覚的にあるものですか?

佐藤:私は15年前くらいに会社から「好きにしていいよ」って言われた時点で、なんでもやってたんですよ。「ここに土地があるんだけど、建物から作ってくれない?」とか(笑)。

2ndF:佐藤さん、営業マンとして相当優秀ですよ。「こんな機材ありますよ」じゃなくて、「こうやって使ったら面白くないですか?」というところから提案してくれますから。佐藤さんからすれば何てことはないのかもしれないですけど、それが全ての発端になっていることがほとんどなので、彼をクリエイティブディレクターとしてクレジットしているんです。例えば『MNGL(ミングル)』って透明ディスプレイを使ったものがあるんですが、あれも佐藤さんが「透明のディスプレイがあるんですけど、これレイヤードできるんですよ」という話から、「何枚までいけるんですかね」と膨らんで生まれたんです。

福澤:あと、機材も倉庫もあるので、色んな実験がしやすいというのも大きいですね。

2ndF:ワクワクしますよね。『CES』もあそこから始まりましたから。

佐藤:本当、会社には良い環境で仕事をさせてもらって感謝ですね。CESのテクニカルで言えば、いつも一緒に働くうちの頭脳である下平が、仮組みから本番まで通してマッピング調整からシステム構築まで担当して、MVPでした。

YAMACHANG:あと、越境してるかどうかでいうと、2nd Functionって常に越境しているんですよ。それがそもそもの軸というか。

2ndF:確かにそうですね。今後やろうとしていることも、全員の守備範囲じゃなかった“地方創生”だったりして、最終的には“人命救助”までたどり着いてますし(笑)。

ーーそれは全く想像がつかないですね。

2ndF:最初はレーザーとドローンでサバゲー的なものを作ろうと考えてたんですけど、あれ、これ山の中で使えば人命救助できない?と思って。

YAMACHANG:大元の発想は『i_to』で、それを島の規模でやるとこうなった、という感じでしたね。

ーーエンタメ領域の外側まで広がっていく、というのはすごいですね。

2ndF:想像の範疇を超えすぎて切り落としてしまうこともあるし、社会貢献については僕らがやらなくても、ということも多いんですけど。でも、とりあえず考えてはおきたいんです。こういうアイデアがあったとして、藤城さんがいたら何ができるか、とか。結果的にその蓄積がインスピレーションに繋がっているので。

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