『GEMSTONE』クリエイターズオーディション
『ゴジラ』をクリエイター発掘企画に“捧げた”理由は? 東宝×ALPHABOATのキーマンを直撃
新たな才能を自ら仕掛けて見つけたい
ーー具体的にどういう形で育成していくのでしょうか。
西谷:一概にこうだとは言えませんが、例えばセミプロとして活躍されている方なら、コラボの機会を提供することかもしれないですし、学生の方ならば基本的な著作権の仕組みや保険といった生活の安定のためのサポートなど環境整備も含めて整えることまで含まれるかもしれませんし、個別にフレキシブルにご一緒したいと思っています。
東:アウトプットの形としては映画が最高峰としてあると思いますが、我々はそれ以外のコンテンツも作っていきたいと思っているので、その方に見合ったアウトプットを提示したいです。逆に言えば我々もいろんなチャレンジをしたいんです。長尺の映画ができれば一番良いとも考えてはいるものの、映画以外のコンテンツの方が力を発揮できる方ともご一緒して刺激を受けたいですし。
ーーそれは映画以外のチャンネルにマルチに展開していくことを狙っているのでしょうか。
大田:そういうことよりも、今は世の中がマンネリ化していると感じているので、映画もアニメも、ブレイクスルーするものを作るのは、別ジャンルの人かもしれないですから。『シン・ゴジラ』はまさにそういう作品でしたよね。
先日、『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』のマイケル・ドハティ監督が東京コミコンで、キングギドラの3つの首はそれぞれ兄弟で、性格も顔つきも違うという設定だという話をしていました。今までの東宝のキングギドラは3頭とも同じ顔だったので、これも今までにない発想です。そういう新しい視点を持った才能が欲しいですね。偶然にも『ちびゴジラ』を描いたさかざきちはるさんも、キングギドラのちび版「ちびギドラ」の顔を3頭とも変えているんですよ。ゴジラシリーズに詳しくないからこそ、既存のイメージにとらわれず、新しい発想に到れる部分もあると思うんですよね。
ーーマンネリを打破するには、なんでもありのようなカオスなところから生まれる才能が必要かもしれないですね。
西谷:デジタル社会は、そもそもそういうカルチャーですよね。YouTuberもインスタグラマーといったクリエイターも、別に誰から言われた訳でもないのに、そこに莫大なエネルギーを注いで能動的にクリエーションしているわけですから。
大田:今までも才能を見つけるのは大変だったわけですが、今は目に見える形で手が届くところにたくさん才能がいるわけですし、待っているだけじゃなくて、我々からもそこに仕掛けていきたいんです。そういう出会いの機会をこちらから作りたいわけです。
ーー『君の名は。』のヒットは東宝さんのこういう動きを後押しするものだったのでしょうか。
大田:それはありますね。新海誠監督の出自は意識しました。
西谷:当時はYouTubeもなかったわけですし、よくお一人で始められましたよね。ただ、いまは誰でも無料で動画を公開できるようになってハードルが下がった分、かえって情報量が膨大にあふれて才能が埋もれやすくなっている面もあると思います。どうやって新しい才能と出会うのかは引き続き課題の課題ですね。
大田:新海監督は一人での作品作りから始めて、結果的に250億円を超える興行収入を叩きだすクリエイターになったわけです。若い人たちもこういう事例で刺激を受けて、野心を持った人が出てきてほしい。我々もこの企画は“勝つまで”しつこくやり続けます。募集が少なかったからすぐにやめるなんてことはありませんし、サポートもしっかりとやっていきます。ALPHABOATさんにマネージメントしていただきながら、我々が出し口を含めてきちんと考えていきたいんですよ。東宝は映画や演劇だけでなく、映像の商社でもあると思うので、その中から活躍の場を作らせていただければと考えています。
(取材・文=杉本穂高/メイン画像=©TOHO CO., LTD.)
■GEMSTONE クリエイターズオーディション実施概要
・第1回テーマ:「ゴジラ」
ゴジラの世界観にインスパイアされた作品を、実写・アニメ・音楽・イラストなど、ジャンル不問で募集。
・応募期間:2018年11月8日 ~ 2019年2月28日
・応募作品は、3月以降順次「GEMSTONE」公式 YouTube チャンネルで発表予定。
・賞金総額:300万円
・受賞者には東宝プロデューサーとの新規企画開発および ALPHABOAT でのマネジメント契約の機会を提供
審査員は後日発表
公式サイト(https://gemstoneaudition.com/)