大ヒットの秘訣は“歴史あるかわいさ”の追求? カスタムキャスト開発陣が語るVTuberの時代
——これまで『カスタムキャスト』を開発してきて苦労したことはありますか。お話を伺っている限り、大変そうな印象です。
ねい:「かわいいキャラクター」を模索してきた歴史が長い分、その積み重ねで苦労してきましたね。2Dのときからかわいいキャラクターをカスタマイズすることだけを目標にしてきたので、リリースするタイトルごとに苦労があって今があります。それはこれからもどんどん積み重なっていくわけですけど。年始の立ち上げ時点は意見も合致していましたし、滞ることなく進んでいました。
ユーザーインターフェースはパソコンしか作ったことがないので、簡単に片手で操作できるようにしたというのが、唯一苦労したところだと思います。コンセプトとしてスマートフォンの場合、どうしてもボタンが多くなってしまうんです。それをどうすれば手軽にできるのかを試行錯誤したのが記憶に残っていますね。
助田:苦労をひとつ挙げるとするならば、ローンチ後ですね。たとえば、サポートするにもユーザーの数だけみなさんの趣味趣向があるんですよ。そうすると、どういうことが起きるのか。実装してほしいパーツなどの要望が大量に寄せられるんですよ。それらをいかに対応するか、どういった体制を作っていくのかを日々模索しています。
——意見交換するかのように毎週、ニコニコ動画で生放送もやられてますよね。
Yamato:今まさに毎週金曜日にやっていまして。もともとニコニコ動画で生放送をやっていましたけど、その頻度で行なっていたことはないので、面白い体験をさせていただいています。その場でもご意見をいただけるのはありがたいですね。
——思いもよらないユーザーの要望も出てきたりするんですか。
Yamato:要望内容が常に細分化されているので、まんべんなくご意見が届いていますね。ひとつピックアップするのなら、「男性のアバターを実装してほしい」との声をよくいただいていました。ですので、現在、実装を目指して制作しています。
——女性キャラクターメインでソフトを制作してきたなかで、男性にも取り組むとのことですが、そこでの苦労はありそうですか?
Yamato:女性キャラクターをかわいく見せることに全身全霊を賭けてきた会社ですので、男性についてはどうなのか気になっているかと思いますが、ほかのブランドで女性向けの取り組みをしてきています。なので、男性キャラクターについての知見は持っているんですよ。その経験を活かして、周りの要望に応えられるようなキャラクターモデルは作れていたのですが、どのタイミングでリリースするのかを模索していました。『カスタムキャスト』でもたくさんの要望をいただいたので、このタイミングしかないだろうということで、急いでローンチしていこうと考えています。
——男性キャラクターを作りたいと意見を寄せるのは、やはり女性から?
Yamato:そうだと思います。『カスタムキャスト』の3割以上が女性だというデータがこちらにあるので、女性からの要望が多いはずです。
——VTuberのイベントによく行くのですが、そこの客層を見ていると男性が8~9割ぐらいを占めているので、なんだか意外な光景ですね。
助田:そうなんですよ。『カスタムキャスト』の100万ダウンロードがどういう意味を示しているのかというと、やはり現状のVTuberを追っているファンだけではなくて、潜在的なファンが存在していることがわかります。そして、男女比率も変わってきてもいるように感じています。
これからのVTuber業界はどうなっていくのか
——目まぐるしいスピードで成長を続けているVTuber業界ですが、どのように感じていますか。
助田:まだまだ潜在的なファンはたくさんいますし、需要と供給に対して供給が多いと言われていますが、需要はまだあると思っています。これは『カスタムキャスト』のダウンロード数やソーシャルの盛り上がりに基づいての意見です。
ねい:機材面での問題を言うとするなら、iOSでフェイストラッキングができるようにはなりましたが、それでも手や足の動きのトラッキングはまだできません。ですので、一般の方たちにも手が届くよう、テクノロジーの改革が課題なのではないかなと思います。あとは、なにも付けずにトラッキングできるようになるのが一番ですよね。なので、AIの発展やソフトウェアの進歩が必要不可欠です。そのため、エンジニアに頑張っていただかないといけないのですが。
助田:いろんな最新技術がVTuberに集まっているんですよね。音声変換から始まり、appleのAR機能やHTC VIVEのトラッカーなど。最先端なエンタメが集まってきていて、ものすごい速度で進化している背景があります。これは業界にとって一長一短かなと思っています。ここまでのスピードで業界が成長していくと、クリエイターやファン、運営が突然疲れてしまうのではないかと思うでしょう。想像としては1年半ほど先を行っている気がするんですよね、VTuberが利用している技術が。みんなが走っているので、どうにかして疲れないようにしたいんですよね。もっと長く続くべき文化だと思っていますし。
業界としても「早さ」は重要なキーワードになっているので、私たちもいろんな要望に応えるために早く走ります。ただ、お互いに疲れないようにしようと言いたいですね。これだけ最先端の技術が集まっているので、もっと長く楽しめると思ってます。今はマラソンをするペースで走らなければいけないのに短距離走のペースになっているのが心配ですね。でも、取り組んでいるクリエイターはみんな楽しそうにしていますし、意見を共有して長く付き合うことがこれから大切になってくると考えています。
(取材・文=聖☆阿部さん)
■カスタムキャスト
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