ライブ演出を“総合エンターテイメント”にするための方法 空間演出ユニットhuezによる『CY8ER 4th ワンマンライブ』解説(後編)

トラックメーカー目線とファン心理で組む


 セットリストを決める上でも、やはりギミックが重要になる。今回はhuezのYAMAGEとあなみーというクルーで組んだのだが、これには2人の作家性が思いっきり出ている。自分が一つ注文したのは、「今回、極端に振り替わっていく演出をとりたいから、派手な曲は派手な曲で、エモい曲はエモい曲で、一カ所にまとめてほしい」ということだった

 YAMAGEは、フェスや音楽のライブ自体がすごく好きで、セトリのギミックを本当によく知っている人。セトリの並びの美しさ、音の並びの美しさにこだわる。特に、各ブロックの頭、真ん中、最後の曲を何にするかにこだわる。そして、その最後の曲がちゃんと次のブロックに行くときに違和感がないか。これは曲調を先行させた、トラックメーカーの目線に準じたセットリストの組み方だと言える。

 あなみーもバンド畑から出てきていて、セトリのギミックをすごく知っている。それにプラスして、CY8ERの照明をいちばん最初からやっている人。だから、いろんなライブをやってきて、いまこう来たぞ、という大きな流れを知っている。あなみーが言っていたのは、「本編ラストの曲は、今回は絶対にこれがいい」ということ。「最後にこの曲で終わるのは感動する」と。これは活動としての「物語」を考えた、ファン及びメンバー心理を重視した構成だ。

 そして2人が出した提案に対して、自分が「はくちゅーむ」の3連続を加えた。自分の「はくちゅーむ」の演出は、そことはかち合うものになるから、全部アンコールに倒した。本編はもう完成していたから。

1曲1曲でワンマンライブに

セットリスト

 演出の構成を考えるときは、頭のなかに、心電図のような波を思い浮かべる。その波で言うと、今回は6ブロックある。

 大まかに言うと、最初に、正常値を一線決める。自分の演出は基本的にやや高めからスタートだ。1部から3部までは上がりっぱなし、そして、4部でいきなり落としてゼロに。そこから、5部でまた上げて、やや高めのスタート状態に戻して、6部のアンコールで1部から5部の波を高速で再現する。

 もちろん、それぞれのブロック内でもアップダウンがあり、その解像度を上げると、曲単位になり、曲単位の解像度が上がると、曲内の構造になって、それをさらに細かくすると曲のなかの音になる。

 極端に言うと、解像度を限界まで上げると、1曲1曲でワンマンライブをやっているようになるということだ。全体でワンマンライブにする。ブロック単位でワンマンライブにする。曲単位でワンマンライブにする、という。

 細部のアップダウンは、曲が条件になる。そもそも曲のなかに上がり下がりがあり、それに合わせたり、無視したりする、というのをとる。ただそれが意図的に、ただただ真っ平らになっているときもある。

6部の波のさらに中身


 さらにその中身について話すと、まずオープニングSEは、ド派手。オープニングだからインパクトをつける。そして1部目は、入口としてのド頭3曲で、今回、演出の光り物は、ムービングがある、レーザーがある、映像がある、というのをお客さんにわかりやすいように見せる。極端に見せず、ただ普通に出す、という。

 2部目は、もう見えなくてもいい、というド派手状態。「お客さんが気絶してもいい」という光の演出をする。3部目は、DJのYunomiさんが単体で15分ほど出演するブロックで、DJは鳴っている音と空間がおもしろければいいので、人間への意識を完全に抜いて、さらにド派手を拡大させる。 

 4部目は、バラードというようなゆっくりした3曲で、演出を一切使わないで、しっとりさせる。要はただ照明がついていて、本人たちが綺麗に見える、という人間にフォーカスを当てるブロックだ。

 5部目になると、その人間が人間を見ているという見方から、人間がカメラ映像を通して人間を見ると、より鮮明に見えるーーという演出をかける。そして、だんだんその映像にエフェクトをかけたり、演者に残像をつけたり、ノイズがはしるというのをやって、だんだん人間が人間じゃなくなっていく。映像に映ってるのは人間なのに人間に見えなくなる、という演出をして、本編が1回終わりを迎える。

 そして、6部のアンコールは全部で5曲で、前に言ったように、そのうちの3曲は「はくちゅーむ」という曲を3回連続でやる。アンコールが5曲なのにも、意図があり、6部目は、アンコールの1曲目から5曲目で、それまでの1部から5部の演出のテイストを、1曲毎に再現するからだ。

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