へきトラハウスはなぜ音楽活動を本格化した? 初EP『搬送』に見る、過激派YouTuberのスタンス
過激派チャンネルとしての苦悩が表現された「くずむしの歌」
動画では表現しきれなかった彼らの考え方やコンセプトが、わかりやすく打ち出されている本作品。相馬トランジスタが作詞に参加した「くずむしの歌」の一節にはへきトラの核となる部分が描かれている。
「もうダメかもあちこち痛いよ。もう少しもう少し歯を食いしばり生きてます」とストレートに表現されたサビのフレーズには、炎上や病気など多くの苦悩を経験してきた相馬の切実な思いが詰め込まれているのだろう。しかし「何でだろうわからない。鏡の前で笑ってるんだ」と続く歌詞で、それでも楽しく毎日を過ごしていることが伺える。ジャケットでは、ボロボロの姿でゴミ捨て場に倒れる相馬が写されており、過激派YouTuberの道の険しさを表現している。
ネットでは「YouTuberが音楽に安易に手を出すのはどうなのか」という意見がたびたび見受けられる。それはへきトラも例外ではなく、中には厳しい声もあった。
しかしグループによって音楽をやる理由はそれぞれだ。「YouTuber」と一括りにして論じても、建設的な見方にはたどり着かないだろう。へきトラはこれまでも、感謝や応援といった、チャンネルの色とは異なった部分を表現するために音楽を活用してきた。この作品は、そうしたスタンスの延長線上にあるもので、彼らにとっては必然性のある作品なのである。
9月20日に豊洲PITでのライブイベントを終えたばかりのへきトラ。今後はYouTubeだけではなく、音楽でもファンを楽しませてくれるに違いない。
(文=馬場翔大)