「WAVEDRUM」シリーズ最新モデルから変わり種まで 気になるパーカッション・シンセサイザー4選

 Roland「HandSonic HPD-20」

Roland ローランド デジタルハンドパーカッション HandSonic HPD-20

 Rolandからは、デジタル・ハンド・パーカッション「HandSonic HPD-20」が2013年に発売されている。こちらはプリセット音色が、なんと850種類も搭載されている。Rolandといえば「V Drum」も有名だが、そこに搭載され高い評価を受けているアコースティック・ドラム音色をはじめ、コンガ、ジャンベ、カホン、タブラなど世界各地のパーカッション、スチールパンなどメロディックなパーカッション、さらにエレクトロニック系サウンドやダンス・ミュージック向けサウンドも豊富に取り揃えている。

 また、ユニークなのは13分割された、大小様々なパッド部分だ。各パットには異なる音色を割り当てることが出来るため、これ1台で様々な音色を鳴らすことが出来る。パッドはシリコン素材で、手のひらを使った力強いショットから、指先を使った繊細なショットまで、様々な奏法に対応している。

 また、叩く強さを検出するだけでなく、パッドを押し込むことで音色をコントロールすることも可能。例えば、手前にある大きなパッド2つのうち、左のパッドを指で押し込みながら右のパッドを叩くとミュート効果が得られたり、ピッチを上げたりすることが出来る。「ロール」ボタンをオンにした状態でパッドを叩けば、誰でも簡単にロール奏法ができるのも嬉しい。しかもロールの速さをパッドごとに変えられるので、パーカッション上級者じゃないと出来ないような複雑なプレイも出来るのだ。

 シンセではおなじみのレイヤー機能も搭載。パッドごとに2つの音色をアサインして、叩く強さに応じて切り替えたり、ミックス・バランスを変化させたりも出来る。また、WAVファイルをUSBメモリー経由で取り込む事もできるので、DAWソフトで作り込んだオリジナルの音色を「HandSonic」で鳴らすことも可能。ループ機能もあるので、フレーズごと取り込んでブレイクビーツとして鳴らしたり、その上からさらに演奏をリアルタイムで重ねたり、アイデア次第で様々な楽しみ方が出来るのだ。

 同じパーカッション・シンセサイザーでも、KORGの「WAVEDRUM」はよりフィジカルな、Rolandの「HandSonic」はより打ち込み的な発想で作られた楽器と言えるかもしれない。

 ZOOM「ARQ Aero RhythmTrak AR-48」

ZOOM ズーム リズムマシン エアロリズムトラック Aero RhythmTrak AR-96

 最後は番外編ということで、ちょっと変わった楽器を紹介。ZOOMのグルーブ・マシン「ARQ Aero RhythmTrak AR-96」は、そのユニークな形状と独創的な操作性によって大きな話題を集めたが、そのシリーズ機として2017年に発売された「AR-48」は、「AR-96」以上に直感的な曲作りとパフォーマンスが可能となった。

 「AR-48」と「AR-96」の両方に共通しているのは、多彩な音源を搭載したベース・ステーションと着脱可能でシーケンスを打ち込めるリング・コントローラーにより構成されていること。本体のオーディオ・インに入力した音や外部のWAVファイルもインストゥルメントとして扱え、それらを使ってシーケンスを組むことも可能だ。

 「AR-96」と比較して気づくのは、ベース・ステーションのボタンやツマミが大幅に増え、液晶ディスプレイも2つになっていること。音色の編集を行うサウンドエリア、ソングやパターンの作成を行うシーケンスエリア、リバーブやディレイなどのエフェクトをかけるエフェクトエリア、そしてシーケンスのレコーディングやプレイバックを行うロケートエリアの4つにパネルが分かれており、「AR-96」のようにページを切り替えなくても直感的に操作ができるようになったのだ。

 逆に、リング・コントローラーは「AR-96」よりもグッとシンプルになった。パッド1個あたりの面積が倍になったため、機動性も上がっている。加速度センサーが内蔵されているため、このリング・コントローラーをベース・ステーションから取り外し、揺すったり、傾けたり、回転させる動作で、ディレイ、リバーブ、フィルターなどのエフェクトをリアルタイムにコントロール。「魅せる楽器」としてステージでも注目を集めること必至だ。

 以上、パーカッション・シンセサイザーを4つ紹介した。叩いて音を出すという、プリミティヴな楽しさと、最新技術によるユニークな操作性を併せ持った楽器は、ユーザーのインスピレーションを大いに刺激してくれるだろう。

■黒田隆憲
ライター、カメラマン、DJ。90年代後半にロックバンドCOKEBERRYでメジャー・デビュー。山下達郎の『サンデー・ソングブック』で紹介され話題に。ライターとしては、スタジオワークの経験を活かし、楽器や機材に精通した文章に定評がある。2013年には、世界で唯一の「マイ・ブラッディ・ヴァレンタイン公認カメラマン」として世界各地で撮影をおこなった。

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