『銀魂2』小栗旬ら出演者による副音声上映が話題 映画鑑賞体験を豊かにする新たな試み

新技術が映画館の楽しみ方を拡張する

 今回、『銀魂2』が試みたのは、この技術を用いて監督・キャストによる副音声を提供するというものだ。オーディオコメンタリーは、これまでDVDやBDのパッケージメディアで主に提供されていたが、その鑑賞体験を映画館に持ち込もうというわけだ。

 オーディオコメンタリーもアナログのVHS時代には提供が難しかったが、デジタルメディアの音声切り替え機能によって生まれた鑑賞方法と言える。新しい技術が生まれれば、新しい映画の楽しみ方が生まれる。映画の発展は技術の発展と切り離せないものだが、今回もスマートフォンの高度な音声認識機能によって映画館に新しい鑑賞体験をもたらした事例と言える。


 今回の副音声では、福田雄一監督と主演の小栗旬、映画後半には菅田将暉と橋本環奈も加わって軽快なトークを繰り広げており、息の合ったトークからは撮影現場で培った信頼感が伺える。福田監督のこだわりのカットの解説なども興味深いが、小栗旬が「カッコ良すぎる吉沢亮」に終始嫉妬しているのが印象的で、本編にはない新たな笑いを提供してくれる。松平片栗虎を演じた堤真一がいかにアドリブを多用しているのかを知ることもできたし、しかもそのアドリブ一つ一つがキャラクターの造形に抜群に効果的だったということもわかった。

 人的に最も興味深かったのは、副音声に参加したキャスト一同が、近藤勲役の中村勘九郎の芝居に惚れ込んでいることだった。所作の一つ一つ、細かい芝居にも中村勘九郎ならではの巧みさが隠されていて、役者の視点でそれらを伝えてくれるコメントを聞きながら、大スクリーンの芝居を観ると感動の質はより深くなった。他にも銀魂ならではのノリで副音声でも「ピー音」をたくさん炸裂させており、銀魂の世界にどっぷり浸かれるものになっている。

 今回、『銀魂2』の副音声提供によって、UDCastによる鑑賞体験が注目されているが、実はこれ以前にも『HiGH&LOW THE MOVIE』音声データの状況説明がシュールかつ作品愛を感じるということで、ファンの間で密かに話題になったことがあった。UDCastによる鑑賞体験の拡張は、熱心なファンによって以前から行われており、バリアフリーに留まらない可能性を持った技術なのだ。

「UDCast」映画音声ガイド(c)Palabra株式会社

 実際に音声ガイドを制作している方も、自身のTwitter(@nijitone)で『UDcast』はバリアフリーの大義だけでなく、映画館の観客を増やすツールなのだと語っている。

 3D、4D、スクリーンX、それから爆音上映や応援上映など、近年映画館での鑑賞形態は多様化し、新たなスクリーン体験を創出している。この『UDCast』による副音声上映もまた一つ新しい鑑賞体験を生み出すものなので、ぜひとも他の映画も挑戦してもらいたい。今回の副音声の提供は、映画館は新技術とアイデア次第で、まだまだ新しい感動を作り出せる場なのだと再認識させてくれた。

■杉本穂高
神奈川県厚木市のミニシアター「アミューあつぎ映画.comシネマ」の元支配人。ブログ:「Film Goes With Net」書いてます。他ハフィントン・ポストなどでも映画評を執筆中。

■公開情報
『銀魂2 掟は破るためにこそある』
全国公開中
出演:小栗旬、菅田将暉、橋本環奈、柳楽優弥、三浦春馬、窪田正孝、吉沢亮、勝地涼、夏菜、戸塚純貴、長澤まさみ、岡田将生、ムロツヨシ、キムラ緑子、佐藤二朗、堤真一、中村勘九郎、堂本剛
原作:『銀魂』空知英秋(集英社『週刊少年ジャンプ』連載)
脚本・監督:福田雄一
音楽:瀬川英史
主題歌:back number「大不正解」(ユニバーサル シグマ)
製作:映画「銀魂2」製作委員会
制作プロダクション:プラスディー
配給:ワーナー・ブラザース映画
(c)空知英秋/集英社 (c)2018 映画「銀魂2」製作委員会
公式サイト:gintama-film.com
公式Twitter:@gintama_film
公式インスタグラム:@gintamafilm

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