フジロック‘18、初のライブ配信の成果は? “デジタルネイティブのフェス”としての可能性

フジロック、ライブ配信は何をもたらした?

「今回の『FUJI ROCK FESTIVAL』で強く感じたのは、配信や電子マネーなど諸々の施策をすべてひっくるめて、日本における初のスマホネイティブ、デジタルネイティブのフェスにアップデートされたのではないかということです。今やスマホは、フェスを快適に過ごすために必要不可欠なツールとなっていて、例えばストリーミングサービスで出演アーティストの予習をするのも、SNSでライブの感想を発信するのも、あるいは現場で待ち合わせをするのも、すべてスマホを通じて行われています。特に配信が行われたのは象徴的で、デジタルとフェスの関連性がより強まった印象です。今回の配信は、ほかのフェスのオーガナイザーや音楽業界も注目しているはずで、ニーズがある限り、今後さらにこのような施策は増えていくでしょう。そして、ユーザー同士で情報が密に共有されて可視化されることで、それぞれのフェスの特性ーー地方でアットホームな雰囲気を楽しむためのフェスとか、あるいは快適な環境の施設で存分に踊るとかーーがさらに明瞭になっていく可能性があると考えています」

 実際に今年の『FUJI ROCK FESTIVAL』に参加した筆者も、ストリーミングサービスなどで予習をしたことで、より深く楽しむことができたライブは多かった。また、多くの参加者が同じように予習をしたことで、盛り上がり方にも変化があったと感じた。N.E.R.D、ケンドリック・ラマー、アンダーソン・パークと続けて見ることで、2000年代のヒップホップの潮流を俯瞰的に体感することができたのも、ストリーミングをはじめとしたネットサービスの情報を収集していたからに他ならない。

「デジタルを活用することで、フェスの楽しみ方にさらなる奥行きが生まれることは間違いないでしょう。これまでは、目当てのアーティストを見るためにフェスに行くという方が多かったと思いますが、音楽へのアクセスがより容易になった昨今であれば、フェスに行って知ったアーティストの楽曲をストリーミングでチェックしたりと、より双方向的な音楽の楽しみ方が拡がっていく可能性があります。また、今回の『FUJI ROCK FESTIVAL』のYouTube配信ではコメント欄を解放していて、荒れることもあったようですが、こうした施策は長期的に見れば音楽への寛容性やリテラシーを高めていくでしょうし、現場に行けなかった方の参加感も高めるので、今後も続けて欲しいですね」

(取材・文=松田広宣)

■イベント情報
FUJI ROCK FESTIVAL ‘18
2018年7/27(金)28(土)29(日)
新潟県 湯沢町 苗場スキー場
http://www.fujirockfestival.com

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