Samsung、AR絵文字のアップデートを発表 Appleとの競争にも変化が生じる?
アニ文字とAR絵文字の比較
AR絵文字は、実のところ、iPhone Xの「アニ文字」との類似性が指摘されてきた。こうした事情から、Galaxy S9/S9+が海外でリリースされた3月には(日本では5月にドコモとauからリリース)、多数の海外メディアはAR絵文字とアニ文字を比較する記事を掲載した。
比較記事のなかでもApple製品専門メディア『MacRumors』のものは、比較動画を作成して詳細に論じている(下の動画参照)。これを見る限りでは、アニ文字のほうが顔の表情がリアルであるが、カスタマイズ機能の豊富さに関しては、AR絵文字が勝っている。また、AR絵文字はアニ文字よりむしろSNSアプリSnapchatのフィルタ機能に類似している、とも評されている。
ふたつの機能で差が生じた原因としては、アニ文字はFace IDを可能としているTrueDepthカメラによってユーザの顔を立体的にトラッキングしているのに対して、AR絵文字には同等のカメラ技術が使われていないから、と指摘されている。
海外メディアの反応
今回のAR絵文字アップデートに関しても、海外メディアはアニ文字との比較という観点から評している。テック系メディア『The Verge』は、アップデートされたAR絵文字は、カスタマイズ機能に関してアニ文字を発展させたMemojiをも上回っていると評価。さらに、こうしたカスタマイズ機能はAppleも実装したいと望んでいるだろう、とも述べている。
US版Engadgetは、現状のAR絵文字は若干の「不気味の谷」(デジタル表現されたヒトの写実性が高まると、不気味に感じる現象)を感じさせるが、アップデートによってこの現象による不気味さが減るだろう、と評している。
今回のアップデートによって、AR絵文字はカスタマイズ機能という強みをより強くし、課題であった描画性能を改善した、と言える。それゆえ、アニ文字を凌駕するとは断定できないまでも、総合評価を高めたと見ることができる。しかし、9月に発表されると思われる次期iPhoneに画期的な機能が実装される可能性は否定できない。今年後半には、アニ文字とAR絵文字という対立軸とは異なる開発競争が始まるかも知れない。
トップ画像出典:YouTube「A Look at What’s to Come in Samsung’s AR Emoji Update」
■吉本幸記
テクノロジー系記事を執筆するフリーライター。VR/AR、AI関連の記事の執筆経験があるほか、テック系企業の動向を考察する記事も執筆している。
Twitter:@kohkiyoshi