過激なバイオレンス描写に挑んだNetflix『バキ』、地上波放送はどうなる?

レイティング制度なく自主規制頼りの日本のテレビ事情

 日本の漫画はしばしば過激な暴力描写を含む。そのこと自体の是非はここでは問わないが、そうした漫画を原作にアニメを製作する場合、「どこまで描写できるのか」という問題が必ずつきまとう。

 すでに日本の深夜アニメ放送に慣れ親しんでいる人にとっては、人体の切断面に不自然な黒い影が入ったり、性的なシーンで不自然な光が射し込むなどの描写はおなじみのものになっている。

 例えば、『ジョジョの奇妙な冒険』第3部では人体が切断されるシーンが数多く登場するが、テレビ放送時にはかなり不自然な黒塗りが散見された。『テラフォーマーズ』に至っては、ほとんど画面の半分ほどが黒くなってしまっているようなシーンすらあった。それらの規制はBD・DVD版にはないものだが、テレビ放送版はファンにはかなり不満の残る内容になってしまったのは確かだろう。

 日本のテレビにはアメリカのようなペアレンタルコントロールの制度がない。アメリカのテレビは映画の映倫制度のようなレイティングシステムが整備されており、それに応じて放送できる描写が異なってくる。全年齢対象の場合は、日本の自主規制以上に厳しい規制を強いられるが、逆に17歳未満の視聴を禁じるTV-MAのレイティング作品は、性的描写も暴力描写もある程度自由になる。例えば『ウォーキング・デッド』や『ホームランド』と言った作品のレイティングは、TV-MAである。いずれも日本のテレビはなかなかお目にかかれない性的描写や凄惨な描写を含む作品だ。

 日本の場合は、放送局ごとの自主的な基準で描写制限をしている。それらはあくまで自主的なものだが、明確な基準がないためにかえって萎縮した状態にあると言えるだろう。

 そういう状態の日本のテレビで、今回『バキ』がどこまで規制せずに放送できるのか。逆に何も規制されずに放送されるのだとしたら、それは自主規制のあり方に一石を投じるものになるだろう。一方、規制だらけになってしまうなら、テレビにはできないコンテンツを提供するネット配信事業者の存在意義が高まることになる。7月1日の放送は要注目だ。

■杉本穂高
神奈川県厚木市のミニシアター「アミューあつぎ映画.comシネマ」の元支配人。ブログ:「Film Goes With Net」書いてます。他ハフィントン・ポストなどでも映画評を執筆中。

■配信情報
Netflixオリジナル作品
『バキ』
毎週月曜日配信中

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