米ギブソン、事実上の“経営破綻”を選んだ理由 老舗ブランドが消える可能性は?

 万一ギブソンが倒産した場合、ギブソンというギターブランドもなくなってしまうのだろうか。

「もちろん再生が失敗し、本当に倒産することもあるかもしれません。しかし、たとえそうなったとしてもブランドとしてギブソンがなくなることはあり得ないと思います。企業規模が保てない最悪の状態になったとしても、ブランドと特許を管理しながら他社にOEM生産を委ねるという事業形態も十分考えられます。ギブソンと並んで伝統ある楽器メーカー、グレッチは何度か経営不振に陥り、1967年にはボールドウィンというピアノメーカーに買収され、1980年にギターの製造を中止しています。その後、Stray Catsのブライアン・セッツァーが使ったことで人気が再熱。そして、1985年に会社は創業者であるグレッチ一族の手に戻り、1989年からリイシューモデルを中心としたラインナップで製造を再開するんですが、現在に至るまで製造を担当しているのは日本の企業です。商標ライセンスと権利を持つブランドと、製造事業は別だという在り方ですね」

 冬将軍氏は最後に、「あくまで『会社を再建するため』の米連邦破産法第11章申請であり、今回の経営破綻は、ギブソンブランドを守るための現段階における最良の手段だったのでは」と指摘した。

 世界中で長年にわたり愛されてきたギブソン。これからも多くのアーティストとリスナーから支持されるブランドであり続けてほしいものだ。

(文=村上夏菜)

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