Spotifyの株式上場申請書に見る、音楽配信サービスの現状と課題

Spotify、ニューヨーク証券取引所上場へ

 音楽配信サービスのSpotifyが2月28日、ニューヨーク証券取引所への上場を正式に決定し、申請書を公開した。

 申請書類によると、Spotifyの2017年12月期の売上高は40.9億ユーロとなっており、前年度の29.5億ユーロと比べると大幅に収益を伸ばしている。Spotifyは現在61カ国で運営されており、月間アクティブユーザーは1億5900万人、有料のプレミアムサービス利用者は7100万人だという。

 音楽配信サービスを運営する企業が、収益やユーザー数の具体的な数値を開示することは今回が初めてのこと。Spotifyの上場申請によって開示された情報から、音楽配信サービスの現状や問題点を、デジタル音楽ジャーナリストのジェイ・コウガミ氏に解説してもらった。

「今回の情報開示にて、Spotifyは会社として赤字経営であることが明らかになりました。音楽配信サービスの中ではSpotifyがユーザー数でApple Musicの約2倍。世界トップのシェアを保有しているため、Apple Music、Amazon Music Unlimited、Google Play Musicなどの各種音楽配信サービスも軒並み赤字状態にあると言えるでしょう。つまり、音楽のストリーミングやサブスクリプションサービスのみで利益を生み出すことは現状では非常に難しいということ。音楽配信サービス業界として、どのように収益化していくのかが、今後の注目ポイントとなります」

 また、ジェイ氏は、今回の情報開示によって音楽市場の一部が可視化されたと続ける。

「これまでSpotifyやApple、Amazonも情報を開示してこなかったため、音楽配信サービスが何を行っているのかが見えにくい状況でした。今回の開示は、楽曲を提供するアーティストやレーベルはもちろん、広告主にとっての新しい指標になることは確実です。音楽配信サービスのビジネスの流れをクリアにする良い機会になりました。例えば、Spotifyは利益としてはまだ赤字ですが、ユーザー数は去年だけでも46パーセントも伸びています。これから広告を出す企業もさらに増えていくと思います。実際、2017年の広告収入は前年と比べて41%増収。音声広告やブランド広告が徐々に機能し始めていると言え、Spotifyの透明性を高めるための指標になり、音楽市場全体に影響を与えます」

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