『南田南弁護士は天才肌』南が対峙する社会の壁の厚さ “湊人”高橋文哉が担う“救い”の役割

11月2日に放送された『南田南弁護士は天才肌』(カンテレ・フジテレビ系)第3話は、今作が見つめるテーマの重さを知らせるエピソードだった。
南(芦田愛菜)は、宮地(山口馬木也)が担当する事件を手伝うことになった。フカマチ・バイオテック会長の次男が長男を殴って死なせてしまった。次男の惣介(大政凜)は自閉症で南にも声がかかったのだ。
自閉スペクトラム症にくわしくない人でも、第3話を観れば、どのように当事者と接すればいいか伝わったのではないだろうか。南たちは、惣介が好きな「ウルトラマンゼロ」の格好をして惣介と会う。隊員に扮した小春(久保史緒里)の紹介で、ウルトラマン役の南と敵役の宮地が渾身のパフォーマンスを披露した。南の父である誠(角田晃広)からのアドバイスでは、自閉症の人とコミュニケーションを取るには「好きなものを掘り下げたらいい」とのことで、さっそく実行したのだった。しかし、事件のことを聞くと惣介は取り乱してパニック状態になってしまった。
第3話は刑事事件である。傷害致死罪について情状酌量や責任能力の有無により、刑が減軽・免除されるかが焦点となる。惣介がなぜ暴行に及んだかは動機が不明で、そのため南たちは聞き取りを行ったわけである。また、犯行当時、惣介が心神喪失あるいは心神耗弱状態にあったかも争点になる。心神喪失は精神の障害により事理弁識能力または行動制御能力を欠く状態にあることをいい、それらが著しく減退したのが心神耗弱である。それぞれ責任能力が完全に失われているか、著しく減退している。精神の障害は広義のもので、疾患だけでなく、アルコールや薬物の摂取による一時的な意識障害や酩酊状態も含まれうる。
早い段階で被害者の希死念慮を読み取った弁護団に対して、遺族である父母は息子の死を受け入れられず、ましてやそれが自死に起因すると認められないのも無理はない。「子は人生の成績表」という父親の言葉もあったが、期待をかけており、弟にも優しかった長男がどうしてという疑念を振り払うことができないのだ。それに加えて、惣介との意思疎通の困難さがあり、症状が比較的軽度で社会的に成功した南を目にしたことも拍車をかけていた。
事態を複雑にしているのは自閉症に対する社会の壁、すなわち偏見だ。ナチスの優生政策で、自閉症を含む知的障がいや精神疾患を持つ人々は「生きる価値のない命」として強制断種が行われ、安楽死させられた。彼らは、南がいう「生きる価値があるかないかを測られる人間」として命を選別された。そうした歴史的事実は通奏低音のように今作に響いていて、惣介や南に対して周囲の人が向ける視線、南が自分自身に向ける態度にも影響する。
また、それとは違う角度で検察官の追及は問題をはらんでいた。「自閉症の被告人は他の犯罪者と違うから減刑すべきと言いながら、自閉症の弁護士の事情は他の法曹と同等に扱えと。おかしくないですか?」からは、自閉症の当事者が自分たちの都合で弱者の立場を使い分け、特権を主張しているというニュアンスが読み取れる。自閉スペクトラム症に対する世間の無知を背景に、自閉症である南や他の人たちを不当におとしめる印象操作なのだが、残念ながらマイノリティや社会的弱者に矛先を向ける人間が後を絶たないのが現状だ。
結果的に遺族の要請で南は弁護団を外れたが、たとえ南が在廷していても、裁判長は惣介の言動から心神耗弱を認定したと思いたい。とはいえ、南自身は「私は被告人の力になれません」と言って一歩引いた形だ。クライアントを相手にする以上、現実的に考えたら南の言うとおりなのかもしれない。ただし、そうなると、症状が軽度な南で無理なら、自閉スペクトラム症や他の発達傾向を持つ人が法律家として活動する道が閉ざされてしまう。なにより南の自己実現が阻まれる。万人に権利を認め、個人を尊重するのが法の精神であるにもかかわらずだ。
南が対峙する社会の壁の厚さを痛感した第3話だった。重みのあるエピソードで救いになったのは湊人(高橋文哉)の登場場面で、湊人の寄り添い方や柔らかなまなざしは、単なる癒し要素にとどまらない示唆を与えるものだ。オリジナルにもあった首吊りを試す南を湊人が止めようとして急接近するシーンや「ちょっと肋骨をお借りします」の名台詞を再現したのは、原作ファンにとってうれしいポイントだろう。
それと同時に自閉スペクトラム症と向き合う私たちにも課題を突き付けていた。南を育てた誠が孤独を感じながら娘に愛情を注ぎ続けてきたこと、「南の世界」を尊重しながら親子の関係を一歩一歩築いてきたことに彼の歩みの偉大さを思わずにいられない。あらためて障がい児をもつすべての家族は偉大である。誠役の角田は演技自体がユーモアにあふれているが、登場シーンがいつだって楽しいのは根底に人間的な温かさがあるからだと思う。
■放送情報
『南田南弁護士は天才肌』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00〜放送
Netflixにて、各話地上波放送終了後に順次配信
TVer、カンテレドーガにて見逃し配信
出演:芦田愛菜、高橋文哉、細田佳央太、久保史緒里、柿原りんか、山口馬木也、平岩紙、角田晃広
原作:『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』(An Astory format)
脚本:田辺茂範、モラル
演出:三宅喜重、安川有果、洞功二、中田博之
プロデューサー:加藤春佳、本郷達也、三浦菜月美
音楽:末廣健一郎、MAYUKO
主題歌:muque「いいんじゃない」(A.S.A.B)
制作協力:MMJ
制作:カンテレ
©︎カンテレ
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