『南田南弁護士は天才肌』韓国版からの“脚色意図”を分析 比較でわかる両作の家族観

10月19日よりカンテレ・フジテレビ系列にてスタートしたドラマ『南田南弁護士は天才肌』(以下、『南田南』)。2020年代を代表する韓国ドラマの一本に間違いなく数えられる『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』(以下、『ウ・ヨンウ』)の日本版リメイクとして、放送前から話題を集めていたこの秋の新作だ。自閉スペクトラム症のハンディキャップを持つ新人弁護士の南田南(芦田愛菜)が、様々な依頼を引き受けながら弁護士として成長していくヒューマンリーガルドラマである。
現時点で言えば、基本的な人物設定はもちろん、取り上げられるエピソードもほぼオリジナルの『ウ・ヨンウ』を踏襲している。南やヨンウの特性は、時としてマジョリティが持ち合わせている固定観念に別の視点を加える鍵となり、問題解決の突破口となるが、多くの場合彼女の日常の足かせにもなる。その困難の象徴として、『ウ・ヨンウ』で登場するアイテムが「回転扉」と「キンパ(韓国の海苔巻き)」だ。

ヨンウが採用された弁護士事務所の表玄関には回転扉がある。視覚的な空間認知が難しいせいで、ヨンウは扉に入るリズムが掴めずに立ち往生してしまう。一方、南に立ちはだかるのはエスカレーターだ。回転扉は戦前初期より日本へ導入されたというが、2004年に商業施設で子どもの死亡事故が発生したことをきっかけに安全基準が厳格になり、東京ドームのように気圧維持が必要な建物以外ではほとんどが撤去と変更がなされていったということもあり、『南田南』では変更になったのだろう。
また、大抵の場合切って提供されるキンパは、断面から中身に何が入っているか一目で分かるので、予想外の出来事に対応できない自閉症スペクトラムにとって、安心できる食べ物なのだとして『ウ・ヨンウ』に登場する。一方リメイク版では、日本人に馴染み深いおにぎりが南のお気に入りである。だが一般的に、おにぎりは中の具が分かりづらい。そのため具のない塩むすびに取り変えられている。このように「どんなシチュエーションにハードルがあるのか」「何が困難なのか」という本質をうまく捉えながら、日本の社会状況にうまくローカライズしている。

とりわけ興味深かったのは第2話、結婚式で起こったハプニングをめぐる損害賠償事案のエピソードだ。ある財閥の娘が、同じく裕福な企業の息子との結婚式当日、バージンロードを歩く場面でドレスがずり落ちた。大衆の面前で新婦は肌が丸見えになってしまい、背中のタトゥーまでばれてしまった。式を台無しにしたとし、新婦の父親はホテル側を相手取り巨額な賠償金を請求する。ところが裁判が進むにつれ、新婦がある秘密を抱えていたことがほのめかされる。ラストではヨンウのささやかな一言をきっかけに奮い立たされた新婦が、自分は女性を愛しているのだと告白し、パートナーと手をつないで裁判所を出ていく。リメイク版も、おおまかなあらすじと「家族からの自立」というテーマに差はないが、細部に日韓の社会の違いが垣間見える。




















