『南田南弁護士は天才肌』日本ローカライズの秀逸さ 久保史緒里がコメディエンヌ適性を発揮

10月26日に放送された『南田南弁護士は天才肌』(カンテレ・フジテレビ系)第2話は、裁判を通じて隠れていた本心があらわになる展開だった。
豪勢なホテルでの結婚式。純白のウェディングドレスに身を包み、新郎に手を引かれてウェディングロードを進む新婦は美しく輝いている。そこで起きたハプニングが、高額の慰謝料を請求する損害賠償事件へと発展した。
『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』で第2話に配置されたエピソードは、リメイクの今作でも初回に続く要の位置に挿入された。南(芦田愛菜)は、同僚弁護士の氷見(細田佳央太)や小春(久保史緒里)、パラリーガルの湊人(高橋文哉)たちと関係者の聞き取りを行い、そこで新たに明らかになった事実が裁判の行方にも影響した。
巧みな日本版へのローカライズによって、今作は第一級のリメイク作品となっている。サブキャラクターが関与する第2話は、ドラマの人物相関図が立体的に立ち上がる回でもあった。湊人にひそかに思いを寄せる小春がせっかくのチャンスを逃す残念エピソードは、原作の要素をソフトに改変。「ちょっとせっかちなエンジェルちゃん」の台詞が印象的な久保史緒里が、コメディエンヌとしての適性をいかんなく発揮した。
挙式費用の3千万円に加えて、慰謝料として7千万円を請求したい。原告の要望にどう応えるかについて、贈与されるはずだった土地の時価を特別損害として請求することは、理論上考えうる構成ではある。財閥の力が強い韓国で、名家同士の結婚が持つ意義が大きいことを考慮すれば、状況が異なる日本で別の事情や背景を付け加える選択肢もあったと思うが、原作のストーリーラインを尊重した構成から、オリジナルへの深いリスペクトが垣間見えた。
また、オリジナル版の親からの自立という家族のドラマに加えて、無宗教に次いでキリスト教が多数を占める韓国社会における価値観のギャップを、さらにジェンダーとからめて重層的に描いた構成を、歴史的な経緯も踏まえてか、信仰の要素を捨象してロマンティックラブの方向に寄せたのは、文化的な軋轢を最小限にとどめる行き届いた改変といえるだろう。
その結果、転換された南の「愛していますか?」の質問は、今作では、第2話ラストで、新郎である御子柴(入江甚儀)へ向けられた。一方的ではない男女のすれ違いを丁寧に描くことで切なさを増幅しつつ、南と湊人の視線の交錯を、男女の機微に疎いがクジラの話なら嬉々として語る南の「人の気持ちは難しい」という台詞に集約させる脚本が冴えわたっていた。
主演の芦田愛菜について、第1話と第2話を観ることで、芦田の演技プランが明確に伝わってくる。「南田南」には、パク・ウンビンが演じたウ・ヨンウだけでなく、自閉スペクトラム症を持ち、日本の司法試験に合格した秀才で、独自のバランスで世の中と対峙する一人の女性が投影されている。芦田が観察や思考を通して演技に昇華しており、そこには、今作を自身が演じることの意味も込められているはずだ。
南の父親・誠を角田晃広が演じているのだが、南とのやり取りは、角田の持ち味が最大限に発揮され、リメイク版の見どころになっている。お笑いトリオ・東京03で大ボケを担当する角田だが、おもしろすぎてドラマであることを忘れる瞬間があった。ここは芦田の頑張りに期待したい。いずれにしても愛すべき改変ポイントといえる。
自分の手で握ったおにぎりは親からの自立のメタファーで、リメイクの今作からは細部まで血が通った“手作り感”が感じられる。日本版の紘乃(渋谷凪咲)のタトゥーはモクレン(マグノリア)の花だった。モクレンの花言葉には「自然への愛」「忍耐」「持続性」がある。生まれ持った“自然”を開花させるのは、持続する愛情なのかもしれない。
■放送情報
『南田南弁護士は天才肌』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00〜放送
Netflixにて、各話地上波放送終了後に順次配信
TVer、カンテレドーガにて見逃し配信
出演:芦田愛菜、高橋文哉、細田佳央太、久保史緒里、柿原りんか、山口馬木也、平岩紙、角田晃広
原作:『ウ・ヨンウ弁護士は天才肌』(An Astory format)
脚本:田辺茂範、モラル
演出:三宅喜重、安川有果、洞功二、中田博之
プロデューサー:加藤春佳、本郷達也、三浦菜月美
音楽:末廣健一郎、MAYUKO
主題歌:muque「いいんじゃない」(A.S.A.B)
制作協力:MMJ
制作:カンテレ
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