『GROTESQQQUE-グロテスク-』SP鼎談 今石洋之×コヤマシゲト×若林広海が紐解く錦織敦史

今石洋之×コヤマシゲト×若林広海SP鼎談

 アニメーション映画『GROTESQQQUE-グロテスク-』が11月6日に公開されることを記念し、リアルサウンド映画部では「スペシャルクリエイターインタビュー」と題した特別企画を全4記事にわたって展開。錦織敦史監督とゆかりの深いクリエイターたちを迎え、これまでの創作活動や最新作の魅力を多角的に掘り下げていく。第1弾は今石洋之、コヤマシゲト、若林広海による鼎談、第2弾は福島祐一と鳥羽洋典、第3弾は田中将賀と山崎莉乃、そして第4弾は鶴巻和哉と錦織敦史による特別対談をお届けする。(編集部)

 『天元突破グレンラガン』でキャラクターデザインを務め、『ダーリン・イン・ザ・フランキス』では監督を務めた錦織が贈る、3本のアニメーションから成る作品『GROTESQQQUE-グロテスク-』が間もなく公開となる。独特な色彩や圧倒的な画力、そして物語やデザインで強烈な個性を放つアニメ映画の凄さや、それを生み出した錦織監督の才能について、錦織監督と付き合いの長い今石、コヤマ、若林が語り合った。(タニグチリウイチ)

「欲張りな男だなと(笑)」詰め込まれた“らしさ”

映画『GROTESQQQUE-グロテスク-』本予告|11月6日(金)公開

――まず、率直に『GROTESQQQUE-グロテスク-』をご覧になっていかがでしたか?

今石洋之(以下、今石):同じ監督という立場で言ったら、ちょっと羨ましいですね。好きなことを詰め込んで、それもオリジナルで3種類の違ったテイストの作品を作る。自分ではこういう企画をうまく成立させることはできないだろうなと思いました。

コヤマシゲト(以下、コヤマ):まず欲張りな男だなぁ、と(笑)。「あれも欲しい、これも欲しい、もっと欲しいもっともっと欲しい」ということをやってしまっているので錦織さんの好きなもので敷き詰められているなぁと思いましたね。

若林広海(以下、若林):尺は短くても、3本とも全部別の世界観とストーリーとキャラクターデザインを持った話なので、実質的に映画を3本作るのと変わらないんですよ。それをやりきるというところがさすがですね。元は気軽な思いつきを瞬発力で形にするような企画だったと思うんですが、そこからこの規模の映画に発展させるあたり、クリエイター錦織敦史の本気を感じました。

今石:かなり前から、こういうものをやりたいとは言っていましたよね。その頃は、3本で60分みたいなものを作るのかなと思っていたんです。そうしたら、しっかり長尺で楽しめる作品になっていました。しかも、3本それぞれの世界観を、基本たぶん錦織がひとりで作っている。

若林:脚本から演出、デザインまで全部自分でやりきれる人って、アニメ業界にもなかなかいないと思うんですよ。さらに錦織さんはプロデューサーとしての側面もある。3本それぞれ違った魅力のある女の子たちの物語をどういう順番で見せるかみたいなことも相当考えたのではと思います。

「錦織敦史濃度が1番高い」 3人が「ノクターン」に見た作家性

――そんな3本ですが、お気に入りは『エリィアンズ』『夜露死駆★少女』『ノクターン〜このグロテスクな夜に〜』のうちどれですか?

若林:断トツで3本目の『ノクターン』ですね。いわば、メカ要素がなくなった『ダーリン・イン・ザ・フランキス』という感じ(笑)。それは冗談だとして、そのくらい錦織敦史濃度が1番高い。『GROTESQQQUE-グロテスク-』はこれを作るための映画だなという印象すら受けました。

コヤマ:やっぱり3本目ですよね。僕は『ダリフラ』でメカデザインをやっていたので、「メカ、いらなかったんだな……」って思って悲しくなっちゃいました(笑)。

若林:僕らTRIGGER勢がいないと、こんなにも純粋で不純物のない映像が作れるんだなって(笑)。

コヤマ:いかに我々が不純な異物になっていたのかという……(笑)。

今石:『ダリフラ』のときは、錦織のガイナックス的なロボットアニメみたいなものへのオマージュがあって、そこに本人のあの趣味性みたいなものをプラスしていたんだと思うんです。今回はそのオマージュの部分をちょっと横に置いて、自分の趣味性の部分の濃度をぐっと高めて作ったっていうことだと感じます。だからすごいストレート。1本目と2本目はこれも好きで出来るという幅広さだけど、3本目はもう錦織敦史そのものという感じですよね。

コヤマ:『エリィアンズ』とかもそうなんだけど、錦織さんって一見ポップな絵柄が持ち味ではありつつ、そこはあくまで表層的なテクニックの部分で、本質的にはリアルな女の子の目や骨格を執拗に描きたがるというか。美少女絵を描くのが好きなイラストレーターやアニメーターって多いと思うんですけど、錦織さんほど女の子の鎖骨とか腰の薄さといった細かいところまでずっと考え続けている人はそういないと思うんですよ。

若林:あれだけ絵柄を変えて、どれも最高品質でアウトプットできるアニメーターは本当に少ない。錦織さんはそのトップレベルだと思います。メカも描けるし美少女も描けるしいい男も描ける。結局何でも描けるっていうのが錦織さんのすごいところなんです。

――そのすごさが、『GROTESQQQUE-グロテスク-』で世間に知れ渡ることになります。もう世界が放っておきませんね。

若林:前作からちょっと時間が空いて、アニメのファン層もぐるっと変わってしまったところにこの作品を名刺代わりに出すことで、今の若いアニメファンに「錦織敦史というクリエイターがいるぞ」ということを知ってもらえるんじゃないかと感じました。

今石:付き合いも長いので、この作品が錦織との「はじめまして」という人の感覚が僕らには分からないけれど、それだけにこの作品が公開されて、初めて錦織敦史を浴びた人がどういう気持ちになるのかは楽しみですね。

「好きなものを作る」ことの凄さ、オリジナルアニメへの思い

――オリジナル作品というところも、そうしたものを求めるファンには嬉しいところですね。

若林:ここにいる3人も錦織さんもガイナックスでアニメを作っていたので、オリジナル作品を作りたいという思いがベースとしてありますからね。

今石:TRIGGERもそのために作った会社みたいなところがありますから。僕がアニメに染まった頃というのは、オリジナルの方が面白かった印象なんですよ。そうした作品に憧れるところから始まっているので、今の原作ものが主流の時代を楽しむ人たちとは感覚が逆なんだろうということを最近感じています。

若林:今回の企画は、錦織さんが作りたいものを作るというのがスタートだったのでは。それを作らせてもらえる環境を用意してもらえたというところに、錦織さんのクリエイターとしての信頼度があるんじゃないでしょうか。オリジナル作品に対して決して風向きがいい時代ではない中で、劇場で3本の物語からなる作品を作ることができるのは、かなり特殊なことです。錦織さんをはじめ、いまのアニメ業界で1本でも多くオリジナル作品が作られるようになれば、僕らとしても嬉しいです。

今石:その姿勢そのものを応援したいですね。オリジナルを作ってる最中は、その作品がどういう面白さになるのかを誰も定義できないんですよ。それを自分たちで確定していく作業自体が面白いんです。そういう機会が増えるといいなと思います。

『グレンラガン』時代から際立っていた才能

――ここで、皆さんと錦織監督との出会いについても教えてください。

今石:付き合いとしては僕が1番古いのかな。はっきりとは覚えていないけれど、近い世代にいる、すしおとかと並ぶと、アクションが得意とか、当時は美少女が得意とかいった感じではなくて、オールマイティにこなせるタイプだなと感じたかもしれません。オールマイティに上手くて、その上頭がいい。版権イラストにしても原画にしても、何が要求されていてどのような出力をすればいいのかが分かる人なんです。こういう見え方をされるからこういうものが必要だということを考え、同時にそれを表現するテクニックを持っているんです。天才肌というよりはクレバーで、ただそのレベルが異常に高いなと感じました。

若林:割と早くから演出もやられてましたもんね?『グレンラガン』を制作する中でもアニメーター一本槍な人ではないだろうということが見え隠れしていましたよね。

今石:『グレンラガン』でキャラクターデザインをやってもらったときも、絵のことだけじゃなくて、結構内容に関してもアイデアを出してくれるんですよね。このキャラクターだったらこういう話がいいんじゃないかとか、こういう過去があるんじゃないかとかいったことが、頼んでないのにぼんぼん出てくる。仕事を任せるたびに、こんなこともできるんだなって驚いた印象があります。

若林:自分は作画オタだったので、錦織さんの存在は『アニメスタイル』のインタビューとかで知ってはいたんですが、すしおさんとか吉成曜さんと比べると、作画系という印象ではなかったんです。それで、『グレンラガン』ではじめて一緒に仕事をさせてもらった時、ストーリーだったりデザインに対して、今はこういうモノが流行っているから、こういったトレンドを取り入れたらどうか?とか、今石さんたちより若い世代が興味を持てるアイデアを出していて、自分も当時そういった部分に興味があったので、そのあたりで意気投合しました。

――作画の面では、当時の錦織監督にどのような印象を持たれていましたか?

若林:元々、版権イラストが上手な人だなという印象はありましたが、『グレンラガン』で男のキャラ、シモンやカミナの口上シーンをカッコよく描きつつ、ヨーコみたいな健康的な美少女やニアのような可憐な少女も描けて、さらにメカのアクションも描けちゃうから衝撃でしたね(笑)。しかも、かわいいだけじゃなくキャラクターのお芝居を描くのも上手い。

今石:『グレンラガン』が終わる頃に割とまじめに思ったんですよ。「ほぼ安彦良和さんだ」って。同じ世代だと、湖川友謙さんの方がデッサンやパースが正確みたいなイメージがあったんですけど、安彦さんはキャラクター性とか感情とかいった芝居の魅力の出し方が、普通とは違うレベルで達成されていたんですよね。メカもキャラクターのように見せる。そういう人って安彦さんぐらいしかいないだろうと思っていたのが、『グレンラガン』が終わるころには錦織はかなりその領域に接近しているのではないかと気付きました。

コヤマ:僕は『トップ2』(『トップをねらえ2!』)のチームにいて、制作の終盤あたりから次は今石さんチームが『グレンラガン』という新作をやる、ということでスタジオの中にバーッと設定画が貼られていってたんです。で、それを見たらすごくかわいいなと思って……めっちゃ嫌な気持ちになりました(笑)

――複雑な感情ですね(笑)

コヤマ:とにかく魅力的だったし、キャラ表として正解値を見せられている感じがしたんです。それでいてあまりに絵が上手すぎる。しかも鶴巻さん(鶴巻和哉監督)が錦織さんのことをとにかく褒めるんですよ(笑)。それでちょっと頭にきて、鶴巻さんに「この絵はちょっとかわいすぎると思います!」とクレームを言いに行ったくらい……嫉妬の対象でしたね(笑)。それで、『トップ2!』が終わって『グレンラガン』チームに合流したんですけど、そこで錦織さんと初対面したときに「コヤマさんってソリッドな絵を描かれる方ですよね」とか言われて(笑)。「なんだコイツ!」って思った記憶が(笑)。

――褒め言葉にも聞こえますが?

コヤマ:当時の僕の絵をカッコつけてるとかスカした感じに見えていたんだと思います。その後、『グレンラガン』でメカのデザインを手伝うようになってからも、隣でキャラ表がどんどんと上がってくるんですけどそのたびに「上手いなあ……グヌヌ」と感じていて、コイツとはいつかやり合わなければ……と思っていました(笑)。

――不穏ですね(笑)

コヤマ:それで、確か『トップ2!』の打ち上げ旅行があって同じ部屋になったので、ここでやり合わねばということで、浴衣で寝そべっている錦織さんに乗っかって羽交い締めにしました(笑)

今石:そんなことやってたんだ(笑)

若林:やってたやってた。2人でくすぐり合ってましたよね(笑)。

コヤマ:コチョコチョコチョ〜って(笑)。で、何故かそこからなんか意気投合して、「コヤマさん、一緒に同人誌やりましょう」みたいな感じになって、若林と3人で同人誌を作ったり、いっしょに焼肉に行ったりしてつるむようになって(笑)。

若林:部活のようにずっと一緒にいた(笑)。

コヤマ:あの頃、三人でバンド組もうぜって話になって、まず楽器を買いに行こう、とスタジオから若林の車で都内の楽器屋をめぐったりもして。錦織さんがベースをやりたいと言いだして、僕もベースやりたかったけど取られてしまったので、だったらギターかと思っていたら若林がギターを買うと言って、そうなると俺はドラムか……いや、それは無理だからツインギターしかないなとか思ってギターとアンプを買って、ガイナックスまで戻ってきて、達成感で満たされて車に楽器を積んだままバンドは終わりました(笑)。それ以後、2度とその楽器が顔を合わせることはなかったという(笑)。

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