『俺たちの箱根駅伝』は“テレビ局の裏側”に切り込む? 大泉洋ら豪華キャストの熱量に期待

『俺たちの箱根駅伝』はテレビ局の裏側描く?

 『半沢直樹』シリーズで知られる直木賞作家の池井戸潤が、国民的スポーツイベントとなっている「東京箱根間往復大学駅伝競走」、すなわち箱根駅伝をテーマに書いた小説『俺たちの箱根駅伝』(文春文庫)が、10月10日から日本テレビ系でドラマとなって放送スタート。駅伝を中継する放送局の中で繰り広げられるせめぎ合いと、関東学生連合という記録に残らないチームのメンバーたちが箱根駅伝に挑む思いが交錯する小説を、テレビドラマはどう見せてくれるのか?

 挑戦かもしれない。テレビ局が『俺たちの箱根駅伝』を原作にドラマを作ることがだ。なぜならそこには、テレビ局にとって傷をえぐられるような苦い描写があるからだ。

 長く箱根駅伝の中継を行ってきた大日テレビが、徳重亮(大泉洋)という男をチーフプロデューサーに抜擢して番組を作ることになった。徳重は、山間部では電波が届かず無理といわれた完全中継を、先人が情熱で実現したときから受け継がれてきた伝統を守り、硬派なスポーツ番組として今回も箱根駅伝を中継する腹づもりでいた。そこに編成局長の黒石武(高橋克典)から、お笑い芸人を出せという横やりが入る。

 視聴率稼ぎを狙ってのものだが、徳重はそれで芸人のファンを集めても、ずっと駅伝中継を見続けてきたファンが、離れてしまうことになると言って編成局長の提案を拒絶する。編成ではすでに、田村健一郎(小日向文世)という芸能界の大物と話し、人気お笑いタレントの畑山一平(生瀬勝久)をゲストにブッキングしていた。徳重は田村のところに乗り込み畑山の出演を断る。

 一時話題となったテレビ局と有力芸能事務所の関係を考えれば、テレビ局にとって有力タレントの出演拒否を招きかねない展開だ。小説でも徳重は会議でつるし上げられる。窮地に陥った徳重がとった手段。それもまた、テレビ局につきものの力関係を利用したものだった。

 こうしたテレビ局内のゴタゴタを、実際に箱根駅伝を中継している日本テレビに重ねて見たときに、そういったことが当に起こっているのかと勘ぐられかねないだけに厄介だ。それでも田村役に小日向文世、畑山役に生瀬勝久といった実力派をキャスティングしているからには、ドラマで描く気満々といった印象だ。

 テレビ局にとって恥になるようなエピソードでも、逃げずに描くことで池井戸の原作をしっかりとドラマ化する覚悟を示そうとしているのかもしれない。それはつまり、日本テレビが箱根駅伝というものに注いでいる思いであり情熱を、ドラマを通して伝えようとすることでもある。

 このことは、実況のあり方についても現れている。ある事情から、ベテランアナウンサーの辛山文三(竹中直人)が長く敬遠していた箱根駅伝の実況を務めてほしいと頼まれる。幸山はスポーツ実況に関するポリシーから話を断り、バラエティで人気の若手にやらせればいいとまで言う。辛山がこだわったことと、そして気持ちを切り替え、実況を務めるようになっていくことからも、駅伝中継に対するテレビ局の人々の熱い思いを感じられるだろう。

 その辛山を、竹中直人が演じていることにも注目だ。喋りが達者な役者であることは分かっているが、癖のある人物を演じることが多いだけに、箱根駅伝の実況のような実直さが求められるシーンで、どのような喋り方をするのかがやはり気になる。上下巻の小説の下巻は、すべて箱根駅伝のシーンで埋め尽くされている。そのままの構成でいけば、終盤は辛山=竹中のしゃべりを存分に楽しめそうだ。そして、読者を感動させた辛山の名実況が、どのように繰り出されるのかにも注目が集まりそうだ。

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