上坂樹里、『風、薫る』で“これから”を担う女優に 大家直美と歩んだ成長の軌跡

『風、薫る』上坂樹里のこれからに期待

 走り出したら止まれない。自身の真の実力が、詳らかになる。「朝ドラ」は“若手俳優の登竜門”だとよくいわれるが、出演したからといって、その後の輝かしい未来が約束されているわけではない。ここで出した結果が、今後の自身のキャリアに大きく影響してくる。主演を務める彼女たちにとっては、若くして不退転の覚悟を求められる正念場であり、命懸けの挑戦なのだ。

 上坂が体現する直美は、長い時間をかけてじんわりと、だがしかし明確に、変化してきた。親に捨てられて教会で育った経験は、その後の人生を自力で生き抜いてみせようという強さになった。物語がはじまったばかりの頃の直美は、他人がどうあろうと自分の考えを曲げない人物だった。だからその声も表情も、上坂の演技がブレることなく真っ直ぐ。周囲の影響を受けない表現で、演じるにあたって何か強固な軸のようなものを持っているのだろうと感じていた。

 しかし、ずっとそのままでは視聴者は飽きてしまう。やがて相方となるりんは対照的で、いつも周囲に翻弄されている人物だ。ときに頼りなくも映るが、そこが人間くさくもあり、彼女の魅力でもある。オーディエンスの興味は彼女ばかりに集中してしまっていたかもしれない。けれども、そうはならなかった。周囲の環境や人間関係の中で、りんの成長とともに上坂の演技が変化していったからだ。機会があれば見比べてほしい。現在の直美と、かつての直美を。長い時間の中でりんをはじめとする多くの人々から大切なものをもらった彼女は、いまとても穏やかだ。声も表情も朗らかである。

 だが、現在の直美といつかの直美は、別人ではない。当然ながら同じひとりの人間で、両者は一本の線でつながっている。それを示すように、ここぞというときには上坂の発声に高強度の芯が入る。年齢を重ねたことを示すようなメイクなど施さずとも、この最終週の上坂の演技からは、大家直美という人間が歩んできた軌跡が感じられる。俳優・上坂樹里は「朝ドラ」という大舞台でのパフォーマンスを終えようとしているところだが、彼女の演技者としての人生は、まだまだ“これから”がある。そしてそれは、まばゆいほど明るい。

■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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