『風、薫る』りんはなぜ“頼りない”シマケンを選んだのか? “真っ当”ではない2人の選択
頼りがいとは対極の「情けない」を絵に描いたようなシマケン。けれど、「幸せにするとは言えない」と言葉にしてしまう不器用さと素直さは、「かわいさ」に他ならない。それがりんには心地よかったのかもしれない。「仕事が好きだからこそ迷ったり、他人の影響を受けやすいりんと小説家志望なのに思うように書けないシマケンは似たもの同士といえるかもしれない」(※1)という指摘にも納得だ。
脚本を担当した吉澤智子氏は、りんのキャラクターを「何が正しく、何が間違いかについて人生をとおして悩む女性であり、(中略)素直というより、まっすぐでちょっとうかつな人」としている(※2)。シマケンを選んでしまうところも、「ちょっとうかつ」なのかもしれない。けれど、瀕死の患者を外出させたり、看病婦を看護学校へ入れたりしたのは、失敗ではあったが何かの「提言」にもなっていた。そういうりんだからこそ、道を切り開けたとも言える。
文学青年のシマケンも、世に出ない小説を書き続けるのは無意味かもしれないし、人生設計としては失敗かもしれない。しかし、この時代の文学青年たちは、西洋の文化や言語、考え方を取り入れることで実は新しい時代を作ろうとしている。脚本の吉澤氏もシマケンについて、「言葉が概念を生む時代なので、それを体現する人、りん(見上愛)のメンターとして登場させたいと思いました」と話している通りだ。
シマケンは、画家になりたいという環(瀧七海)の相談に乗り、まさにメンターとしての役割を果たす。そして、小説家を諦めた後は、甥のために「真っ当に」働いている。
「自由でいるのが苦しかった。誰のせいにもできないから。だから、家族に助けを求められて、自由を奪われて救われた。幼い文四朗(蒼井旬)のために働くのは思いのほか満たされて。あれだけ多くの人に認められたいと思ってたのに」
ある意味、夢を諦めることは悪いことではないとも思えるようになったシマケン。そして、これまた文学青年らしく胃がんになったシマケンを、りんが看病することになった。二人の関係がどんな結末を迎えるのか、最後まで見届けたいと思う。
参照
※1. https://realsound.jp/movie/2026/07/post-2454358.html
※2. https://www.steranet.jp/articles/115724
■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK