『ファーストクライ』は親の“責任の重さ”を真摯に描いた “当事者”の意味を問い直す物語

 『ファーストクライ』(日本テレビ系)が、9月9日に最終回を迎える。後半の物語は、親が背負う責任の重さを描いたエピソードが多かったように思う。

 第6話では、妊娠高血圧症候群による脳梗塞で脳死状態となった高校生妊婦・桐山翠(平澤宏々路)が、自分の命と引き換えに娘を産んだ。翠の父親・桐山尚人(和田聰宏)が、娘の命か孫の命か、選択を迫られる展開、命を落とした娘を泣きながら労う場面には、涙が止まらなかった。

 第7話、第8話では、光井明希(比嘉愛未)の出生の秘密が明らかに。明希の実の母親だったのは、聖フィオナ病院の院長・神谷玲子(真矢ミキ)だった。そして、そのストーリーに沿うように、第7話では先天性の心疾患を持ち、母親に捨てられた経験のある妊婦、第8話では母親の自覚がないまま出産に至ってしまった高校生妊婦のエピソードが描かれた。

 数々のエピソードからは、自分自身の身体を投げ打ってまで子どもを産む営みの尊さと親になる責任から逃げないために周りを頼ることの大切さが見えてくる。誰もが普通にこなしているように見える妊娠・出産、その後の育児は、決して当たり前のものではなく、両親はもちろん、産婦人科医や新生児科医、その他の病院関係者の努力によって、成り立つものだということを忘れずにいたい。

 そして、本作が特徴的なのは、明希自身も産み捨てられた当事者であることだ。子どもを産んだ責任を負わず、自分の前から姿を消した母親へのわだかまりを抱えた状態で、子どもを持つ責任に負けそうになる女性たちに向き合ってきた。自分の母親のような女性を生まないために、自分のような子どもを生まないために。第7話では、同じように母から捨てられた妊婦を前にした明希の独白から、抱え続けてきた母親への複雑な感情の片鱗が見えた。虚空を見つめるように語る明希の姿からは、どうやっても癒せないものがあることがうかがえた。

 だからこそ、第8話で神谷が明希を妊娠していたころの考えや出産後の行動が明らかになったことで、大いに救われたのだろう。愛されていなかったわけではないと知れたことは、復讐を果たすことよりも、明希にとって大きな意味があったはずだ。

 こうした妊娠・出産をめぐる物語を見ていると、やはり考えさせられるのが男性側の責任についてだ。

 第6話の放送前に前半のレビューを書いた際、男性側の責任をどう描くのかが課題であると指摘した。後半のエピソードでは、男性の責任そのものというよりも、妊娠・出産を前にしたとき、当事者にはなれない男性のつらさを描いていたように思う。

 第6話では脳梗塞で脳死状態になった翠を前にした男子高校生の姿、第7話では心疾患を抱え、母親に対するわだかまりを抱える妻を支える夫の姿が描かれた。どれだけ妊娠中のパートナーを心配しても、当事者になれない。自分にできることの少なさを突きつけられることは、当事者である女性とは違う苦しさがあるのかもしれない。

 このことを強く感じたのは、第9話で羽鳥美咲(徳永えり)とその子どもに起きた悲劇に、成す術なく立ち尽くす羽鳥の恋人・正木義則(三河悠冴)を見たときだ。女性がどんなときも責任を負わされる一方で、責任を負いたくても負えないからこその苦悩もあるのだろう。

 母子救命救急班も美咲が勤めるNPO法人も、さまざまな女性が母になるための手助けをしてきた。最終話では、美咲を救えなかった苦しみにさらされることになった明希と正木が、少しでも報われる展開を願い、最後まで見届けたい。

■放送情報
『ファーストクライ 母子救命救急班』
日本テレビ系にて、毎週水曜22:00〜放送
出演:比嘉愛未、松島聡、前田敦子、真矢ミキ、岡部たかし、山村紅葉、濱正悟、遠山俊也、徳永えり、川西賢志郎、優希美青、珠城りょう、瞳水ひまり、俵木藤汰、松本恵莉紗、伊藤麻実子、細井じゅん
脚本:浜田秀哉
脚本:浜田秀哉
演出:大谷太郎、上田迅(ザ・ワークス)
チーフプロデューサー:荻野哲弘
プロデューサー:森有紗、山田勇人、遠藤光貴、大垣一穂(ザ・ワークス)
音楽:菅野祐悟
主題歌:JUJU「夏蝉」(ソニー・ミュージックレーベルズ)
制作協力:ザ・ワークス
製作著作:日本テレビ
©日本テレビ
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