『風、薫る』“寛太”藤原季節は悪人なのか? 派出看護が抱える矛盾に向き合うりんと直美

 NHK連続テレビ小説『風、薫る』第114話では、りん(見上愛)と直美(上坂樹里)が、寛太(藤原季節)の看護婦会が抱える問題の奥にある現実を知る。看護婦の資格を持たない女性たちを派出看護に送り出し、商売をしている寛太。看護を守ろうとする2人にとっては到底見過ごせないことだが、そこで働いていたのは、かつて自分たちが看護したセツ(村上穂乃佳)だった。

 前回、柳生(中村倫也)のもとを訪ねた直美は、寛太の看護婦会について相談していた。そして今回、りんとともに再び寛太のもとへ。「あなたのせいで時間が奪われてるんだけど」と相変わらず容赦のない直美だが、寛太はどこ吹く風。世の中で看護への関心が高まり、派出看護が求められるようになったことで、しっかり稼いでいるようだ。

 直美は、ほかにも同じような派出看護をしているところを知らないかと尋ねる。しかし寛太は知らないと答えた上で、「もうやめとけよ」とこれ以上踏み込まないよう念を押す。りんや直美が目指してきたのは、看護婦という仕事が世の中に認められることだった。その願いは少しずつ実現している。けれど、看護が広がれば、そこには当然“商売”として目をつける人間も出てくる。看護婦という職業が知られるようになったからこそ生まれた、新しい問題とも言える。

 そこで思わぬ再会を果たすのがセツだ。女郎として働いていた頃、病院でりんたちの看護を受け、その後は自由の身となったセツ。りんたちの看護婦会が近くにあることも知っていたという。それでも顔を出さなかったのは、“恩を仇で返す”ような気がしていたからだった。

 なぜ寛太のもとで働いているのか。りんに聞かれたセツは、いろいろな仕事をやってみたものの、学のない自分にはできることが限られていたと話す。そんな時に手を差し伸べてくれたのが寛太だった。しかも、寛太が雇っているのはセツだけではない。身寄りがなく、貧しい女性たちに働く場所を与えているのだという。

 資格を持たない者が患者の家へ出向き、看護をすることには当然危うさがある。だが、それを止めることは、そこでようやく仕事を得た女性たちから居場所を奪うことにもなる。りんと直美が看護を守るために目の敵にしていた相手は、同時に、社会の中で行き場を失っていた人たちでもあったのだ。

 セツだけなら恵風看護婦会で働いてもらうこともできるかもしれない。だが、それでは寛太のもとにいるほかの女性たちはどうなるのか。1人を助けても、同じ境遇の人たちは残る。ということを考えると、りんと直美が頭を抱えるのも当然だろう。

 思えば2人が看護婦を目指し始めた頃、看護はまだ差別の対象だった。病人のそばに立つことそのものが蔑まれ、看護婦という仕事を知ってもらうことから始めなければならなかった。それが今では、看護が必要とされるからこそ、資格を持たない者まで派出看護を仕事にする時代になっている。広がったから終わりではない。その質をどう守るのか、そして看護を仕事にしたい人たちをどう育てていくのか。りんと直美の前にある課題は、以前よりもずっと複雑になっている。

 そんな中、しのぶ(木越明)も派出看護の仕事を再開する。りんは再びセツに会いに行こうとするが、しのぶからは「行ってどうするの?」と問われる。それでもりんは、看護を守るためにもう一度会いに行くのだと答える。セツたちが寛太のもとで働く事情を知ったからといって、資格を持たないまま看護を続ける現状をそのままにしておくことはできない。

 ところが、りんが訪ねたとき、セツは派出看護に出ていて不在だった。そしてしばらくすると、血相を変えたセツが戻ってくる。いったい患者のもとで何があったのか。りんと直美が危惧していた“資格を持たない者による看護”の危うさが、早くも現実のものになろうとしている。

■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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