【今夜放送】『となりのトトロ』を配信時代に観返す意義 いつまでも色褪せない“映画体験”

 スタジオジブリの『となりのトトロ』が8月21日に『金曜ロードショー』(日本テレビ系)で放送される。前週放送された『風の谷のナウシカ』も然り、「またか」と思う人もいるだろうが、少なくともこの30年ほどのあいだ1年おきのペースで夏(一度だけ秋に放送されたことがあるが)に同枠で放送されているので、その感覚はあながち間違っていない。

 少し前までは『タイタニック』や『アラジン』などと同じように、どこの家にも必ずといっていいほどVHSなりDVDなりがある作品だった『となりのトトロ』。しかし現在の主流であるさまざまな配信サービスにおいてはスタジオジブリの意向で一切流れておらず、観たいと思ったときにすぐ近くにあったはずのレンタルビデオ店は片っ端から姿を消し、ブルーレイを購入するという選択肢があるとはいえ、そもそもディスク文化自体が翳りを見せているのが現状。だからこそ、「またか」のテレビ放送というよりも、2年に一度の恒例行事だと捉えるのが適切であろう。

 それはすなわち、新たな世代にスタジオジブリあるいは「映画」というものを継承する行事ともいえる。この『金曜ロードショー』自体もそうであるが、そのなかでも『となりのトトロ』という作品は40代以下の多くの人にとって、映画の原初的体験になってきたことはいうまでもない。かくいう筆者も子どもの頃から何度も観てきているが、最後にしっかりと腰を据えて観たのはもはや前世紀のこと。今回の放送に向けて久しぶりにTSUTAYAに足を運び鑑賞する機会を得たわけだが、“知っているとおり”の映画であったと同時に、“知っているとおり”を上回る映画であったと改めて認識することができたのである。

 あらすじについては説明不要であろう。サツキとメイの姉妹が父親と田舎町(所沢がモデルになっているが)に引っ越してきて、その地でトトロに出会う。途中でメイが迷子になるという映画的なアクシデントが起きるとはいえ、それ以上でも以下でもない。トトロが何者であるかとか、“出会い”に付随しやすい“別れ”だとか、それこそ母親の病状や家族の転居の理由など(当然ある程度の年齢になれば推し量ることができるものだが)が大々的に語られることもない。だが驚くべきことに、この86分には非常に崇高なかたちで物語の基礎が詰まっている。

 ひとつは昭和の原風景。時代設定は昭和30年代前半であり、そこに描かれる農村の風景や生活様式、人々のつながりは映画が公開された昭和63年の時点ですでにだいぶ失われていたものであろう。サツキとメイが暮らす家の設計、人口が決して多くなさそうな地域ながら子どもが大勢いて、電話が引いてある家などほとんどなく、バスの本数も少ない。これらは製作からさらに40年近く経った現代ではなおさら“映画でしか見られない光景”であり、アニメーションといえども、映画に記録された当時の人々の暮らしに他ならない。

関連記事