『豊臣兄弟!』の物語はここから始まる? 後半戦で期待したい“小一郎”仲野太賀の覚醒

 今後の歴史的な秀長の活躍どころはこうだ。

1:1583年 賤ヶ岳の戦い 小一郎は佐久間盛政軍への対応など重要な役割を担ったとされている。
2:1584年 小牧・長久手の戦い 織田信雄・徳川家康連合と秀吉の戦い。秀吉軍が家康に苦戦する中、小一郎は別方面(伊勢方面)を担当、信雄との交渉にも当たる。「秀長」を名乗るのもこの頃。
3:1585年 紀州・四国征伐  総大将に任命された秀長は長宗我部元親を降伏させ、四国平定。大和・紀伊・和泉を合わせ100万石を与えられる。
4:1587年 九州征伐 「大和大納言」と呼ばれるようになる。島津氏との戦いで再び総大将として出陣。
5:1589年 淀城の改修を担当。茶々はここで子を出産する。
6:1591年 病死  

 秀吉よりも秀長は先になくなってしまう。ここを『豊臣兄弟!』ではどう描くかが、後半戦の最大の注目ポイントである。

 その前に、小一郎(秀長)に軍師として目覚ましく活躍してほしい。秀吉にとっての小袖(モチベーション)が信長のあとを継ぐことだとしたら、小一郎の小袖は兄をとことん支えることではないだろうか。戦いがどの程度、描かれるかはわからないが、ドラマの序盤からずっと生きることを第一にしてきた小一郎は、秀吉を生かすことを考え続けるような気がする。

 これまでのようにいろいろな人と誠実に話し合いながら、物事を動かしていく頭脳戦のパターンがどれだけおもしろく描けるかが作家の腕の見せ所かと思う。そんななかで一点注目したいのは、市の娘・茶々(井上和)だ。のちに秀吉の側室になり、秀吉の子を産み、淀君として君臨。豊臣の世の幕引きをする重要人物である。

 第30回で子役から成長した茶々が初登場し、秀吉を叱咤していた。それがやがて側室になるとはなんとも皮肉な話だ。茶々は織田家の血を引いている。つまり秀吉が信長のあとを継ぐという思いがこれで強固になるのだ。だがこれもまた秀吉と茶々の物語になってしまう。

 小一郎の物語にするにはどうしたらいいか。1589年、淀城の改修を担当するところに着目したい。茶々はここで出産する。ここで小一郎と茶々の物語がひとつ描けそうではないか。秀長が、秀吉の命を受け城の改修にあたったと記している『羽柴秀長の生涯』(黒田基樹著/平凡社)には「秀長がその普請にあたった理由はわからない。秀吉の実子誕生を控えて、その居所ということで、一門家筆頭の秀長が面倒をみることになった、と考えられるだろうか。」とある。はっきりわからない箇所にこそオリジナル描写の可能性がある。史実の隙間にオリジナルエピソードを作る。序盤から『豊臣兄弟!』が得意としてきた方法論だ。

 『豊臣兄弟!』は「兄弟」を軸にホームドラマの要素もあること、そのため母や姉妹、妻との関わりを手厚く描いてきていること。それこそ第30回の小袖のくだりからも、後半戦も女性との関わりが重視されていくのではないかと想像できる。まず直近は市のクライマックスをどう描くか。浅井長政(中島歩)を介錯したのが物議を醸した市。信長に「男であったら」と言われ、女性であることをおそらく悔しく思っていただろう市がどう出るか。視聴者(とくに歴史好き)がグウの音も出ないような圧巻の見せ場に期待したい。

■放送情報
大河ドラマ『豊臣兄弟!』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送/毎週土曜13:05〜再放送
NHK BSにて、毎週日曜18:00〜放送
NHK BSP4Kにて、毎週日曜12:15〜放送/毎週日曜18:00〜再放送
出演:仲野太賀、池松壮亮、吉岡里帆、浜辺美波、白石聖、坂井真紀、宮澤エマ、倉沢杏菜
大東駿介、松下洸平、中島歩、要潤、山口馬木也、宮﨑あおい、小栗旬ほか
語り:安藤サクラ
脚本:八津弘幸
制作統括:松川博敬、堀内裕介
演出:渡邊良雄、渡辺哲也、田中正
音楽:木村秀彬
時代考証:黒田基樹、柴裕之
プロデューサー:高橋優香子、舟橋哲男、吉岡和彦(展開・プロモーション)、国友茜(広報)
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.web.nhk/tv/pl/series-tep-P52L88MYXY
公式X(旧Twitter):@nhk_toyotomi
公式Instagram:@nhk_toyotomi

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