櫻井翔演じる竹本が愛おしすぎる 『ハチミツとクローバー』に刻まれた“神名言”の数々

 人が恋に落ちる瞬間を、初めて見てしまったーー。

 数ある青春映画のなかでも、これほど強いインパクトを与えるモノローグを持つ作品は、そう多くはない。映画『ハチミツとクローバー』(以下、『ハチクロ』)の公開から20年。青春映画の名作が、初のデジタル版として再びスクリーンに帰ってきた。

櫻井翔演じる“竹本”が愛おしすぎる件について

 まず、櫻井翔が演じる主人公・竹本が、これ以上ないほどに愛おしい。竹本が通う浜田山美術大学には、美大生というだけあり、独特の感性を持った個性豊かな面々がそろっている。そのなかで、竹本は普通すぎるくらいに普通の青年だ。安心感はあるけれど、刺激はない。たとえるならば、「彼氏にするのは嫌だけど、旦那にするのはいいかも」とか言われちゃうようなタイプだ(作中で、女友達から「旦那ならいいかな?」「やっぱないね」と言われていたが……)。

 そのため、はぐみ(蒼井優)へのアプローチも、不器用すぎるくらいに不器用。デートに誘う時も前置きが長すぎるし、気遣いはできるけど、とにかく会話が面白くない。「城はいいよ! 建造物はいいよ!」とか言われても、城に興味がないはぐみからしたら「はて?」という感じだ。ただ、これだけは竹本のために言わせていただきたい。竹本は、デートで自分の好きなことばかりをペラペラと話すようなわがまま自己中タイプ……というわけでは決してない。話の間を作らないように、できるかぎりの面白い話を必死でしているだけなのだ。

 そんな竹本の恋のライバルが、放浪癖があり、単位を落としまくっている大学8年生の森田(伊勢谷友介)というのがエグい。森田は、「大学一の変人」と言われている一方で、圧倒的な芸術の才能を持っている。並外れた才能を持っているはぐみと分かち合える唯一の存在といっても過言ではないだろう。森田もはぐみの才能を認めており、はぐみも森田に特別なシンパシーを感じている。講師の花本(堺雅人)からも、「こいつらの目で見たら、世界はどんなふうに見えるんだろう」と一目を置かれているふたりの間に、竹本は介入することができない。

 わたしは、本作を観るまで、ラブストーリーは“二人が結ばれるまで”を見守るためにあるものだと思っていた。でも、『ハチクロ』で巻き起こる恋は、そう簡単にはいかない。あゆみ(関めぐみ)が「自分の好きな人が、自分のことをいちばん好きになってくれる。たったそれっぽっちの条件なのに、永遠に揃わない気がする」と言っていたように、現実の恋は思いどおりにいくことばかりではない。

 ハッピーエンドではなくても、こんなに観た人を幸せにすることができるーーわたしは、『ハチクロ』を観た時に、ラブストーリーの可能性を知った。

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