『さよならノワール』恒松祐里が母親役で見せた新境地 橋本則行との親子芝居が胸を打つ
そんなあかりを前に、夏海にも娘を事故に遭わせた過去が重なる。山崎(渡部篤郎)に会うため家を空けた夜、母を捜して外に出た娘が交通事故に遭った夏海にとって、「自分のせいで」というあかりの後悔は人ごとではない。だからこそ、安易に「あかりは悪くない」と慰めることもしなかった。
一方、あかりへの嫌がらせは、ネットで示談金を受け取ったという情報を目にした女性によるものだったことが判明。さらに炎上のきっかけを作ったのも、水沢の所属事務所の関係者だった。事実が明らかになると、あれほどあかりに向けられていた批判も次第に収まっていく。匿名の言葉に追い詰められたあかりだけが、その傷を抱えたまま残されるのが何ともやるせない。
気になるのは、嫌がらせをしていた女性に襲われた際、あかりが「良かった」と漏らしたことだ。自分が傷つけば、将斗を自分から離し、安全な場所へ預けられる。将斗を手放そうとする行動もまた、自分では息子を守れないと思い詰めたあかりなりの選択だった。
やがて将斗は意識を取り戻し、退院の日を迎える。それでも、あかりは児童相談所に預ける意思を変えない。「私は将斗を幸せにできない母親なの」――事故だけでなく、その後に浴びせられた無数の言葉が、あかりから母親としての自信まで奪っていた。
そんなあかりに夏海は、「いい母親かどうかは将斗くんが決めること」と伝える。一晩考えることになったあかりだったが、翌日、約束の時間を過ぎても姿を見せない。将斗も「ママと一緒にいたい」と口にする中、ようやくあかりが駆けつける。「ママが間違ってた」と泣きながら息子を抱きしめる母に、将斗は「僕がいるよ」と笑顔で答えた。
事故後の多くを眠った状態で過ごした将斗だが、意識を取り戻してからの橋本は、6歳の少年らしい無邪気な表情とまっすぐな言葉で、母子の関係を最後に大きく動かす。自分が将斗を守り、幸せにしなければならないと思い詰めていたあかりにとって、将斗もまた自分を必要としていると知る瞬間でもあった。母が子を支えるだけではなく、子どもの存在もまた母を支えていることが、2人のやり取りから伝わってくるシーンだった。
本作では毎話、夏海や絵梨子とゲスト俳優との掛け合いが見どころの一つになっているが、第6話でも、張り詰めた表情であかりの苦しさを見せる恒松と、そんな母に屈託のない笑顔を向ける橋本の掛け合いから感じる親子の絆には自然と心を動かされるものがあった。支援される人物の芝居によって物語に厚みが生まれるのも、『さよならノワール』ならではの魅力だろう。
■放送情報
『さよならノワール』
フジテレビ系にて、週火曜21:00〜21:54放送
出演:小池栄子、北香那、岡山天音、荒川良々、味方良介、濱尾ノリタカ、利重剛、眞島秀和、岡部たかし、浅野和之、戸田恵子、渡部篤郎ほか
脚本:井上由美子
演出:河毛俊作、清矢明子、柳沢凌介
音楽:菊地成孔
主題歌:chilldspot「ドラマ」(RECA Records)
衣装:伊賀大介
心理監修:石橋昭良(臨床心理士/非行臨床研究所)
警察監修:石坂隆昌(ユヌ・ファクトリー)
プロデュース:狩野雄太(スタジオ戦略本部 第1スタジオ ドラマ・映画制作センター)
制作プロデューサー:清家優輝、岸川正史(ファインエンターテイメント)
制作協力:ファインエンターテイメント
制作著作:フジテレビジョン
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