『ガス人間』の大胆なリメイクを分析 『ガス人間第一号』との違いと受け継がれた問い
Netflixシリーズ『ガス人間』をきっかけに興味を持たれた方が、そのリメイク元である東宝映画『ガス人間第一号』(1960年/※正式名称は『ガス人間㐧1号』)を観たら少々面食らうかもしれない。両作は、驚くほど似ていないからだ。身体を気体化できるガス人間と、彼の起こす事件を追う若き刑事と女ジャーナリストという登場人物の設定こそ一部踏襲されているものの、彼らが紡ぐ物語も、そこから浮かび上がってくるテーマも大きく異なる。では、Netflix版はオリジナル版から何を受け継いだのか。その答えを探るためには、まず原点を見つめ直す必要があるだろう。
『ガス人間第一号』は、『美女と液体人間』(1958年)、『電送人間』(1960年)に続く変身人間シリーズの第3弾である。劇中クレジットに表記はないが、『スター・トレック 宇宙大作戦』(1966~1969年)のオリジナルスタッフとして知られるジョン・メレディス・ルーカスの『ガス人間』を原案としたもので、『ゴジラ』(1954年)や『地球防衛軍』(1957年)、『モスラ』(1961年)といった怪獣映画の名作を手掛けた本多猪四郎が監督を務めている。人体実験の失敗によって自らの身体を気体に変ずる能力を得た男が、零落した日本舞踊の家元のために犯罪を繰り返し、やがて破滅へと向かう悲恋の物語だ。
もちろん、“特撮の神様”と呼ばれる円谷英二によるガス人間周りの視覚効果も、一連の怪獣映画のそれと比較すれば地味かもしれないが、十分に見どころとして機能していた。ガス人間こと水野を演じる土屋嘉男に似せた等身大のゴム人形から空気を抜いてしぼませ、衣裳の内側に仕込んだドライアイスと光学合成で焼きつけた青白いガスによって気体化するシーンを表現しており、様々な関連書籍にもメイキング記事が綴られている。特撮映画がトリック映画と呼ばれていた時代ならではの、手品的なおもしろさがあるからだろう。もっとも、ゴム人形では思ったほどの結果は得られなかったのか、実際には土屋自身の顔にガスのアニメーションを合成したカットが大半を締める。そういった意味では、Netflix版における白組が担当したVFXカットの数々は、この正統進化形といえるかもしれない。
完全に気体と化したガス人間が、まるで生き物のように標的を追いかけ回したり、あるいは体内に潜り込んで爆裂させたりといった派手な見せ場はもちろん、皮膚、肉、骨と段階的に気化していく『インビジブル』(2000年)めいたくだりは、現代だからこそ可能となった表現だ。昭和30年代半ばの時点で「将来は電子科学を応用した特殊技術の方法も発見され、その利用によって映画がさらに前進する可能性も十分に考えられてよい」と述べていた円谷英二も納得の仕上がりではなかろうか。