『風、薫る』2人の母とともに成長した“環”英茉 ふとした表情でみせる聡明さと演技力
NHK連続テレビ小説『風、薫る』はいよいよ第18週に突入し、2人の主人公はそれぞれ週タイトルの通り“岐路”に立っていた。
新潟に戻ってきた黒川(平埜生成)から自身が跡を継ぐ病院で看護婦として働いてくれないかと打診されたりん(見上愛)、帝都医大付属病院を辞め、しのぶ(木越明)と派出看護婦会をスタートさせた直美(上坂樹里)。場所は違えども、同じタイミングで新たなチャレンジを目の前にする2人は、やはり歩調を合わせて進んできたバディなのだと思わされる。
そんな2人が心をひとつにして大切にしている存在こそ、りんの娘の環(英茉)だ。奥田家に嫁いだりんは亀吉(三浦貴大)との間に環を授かったものの、夫の乱暴な態度に耐えかねて、幼い娘を連れて家を飛び出す。その後は、東京で母親の美津(水野美紀)や妹の安(早坂美海)の手助けも借りながら、全員で協力して大切に育ててきた。
しかし、りんは看護婦として働くために家を空けることが多くなり、環といっしょに過ごす時間は自ずと限られることに。それでも環は擦れたところもなく健やかに成長しており、その純真さで周囲の人々の心を和らげる。女学校に行かせてやりたいと願う母親の思いも汲み、きちんと言葉にしてりんに希望を伝えるところにも聡明さを感じる。
現在環を演じている英茉は、NHK大河ドラマ『鎌倉殿の13人』(2022年)や『放課後カルテ』(2024年/日本テレビ系)にも出演。2026年は映画を中心に活躍を続けており、環役の元気いっぱいな姿とは異なる表情が映し出されている。
りんが新潟に赴任することが決まったときは、心細い気持ちはあったはずなのに、「寂しいけど夢叶えるのは嬉しい。この頃、お母さんが元気ないのは悲しい」ときっぱり伝える頼もしさを見せた。「この家の本当の家族になります。環ちゃんの2人目のお母さんになる」と宣言する直美には「直美さんがもう1人のお母さんになってくれるのは嬉しいよ」とさりげなく口にする。そばにいる人に対してきちんと心を配ることができるのは、りんがいない間も美津や安、シマケン(佐野晶哉)らに慮ることの大切さを教わっているのかもしれない。
第17週「脈動」で直美が実の母親であることがわかった文(内田慈)の看護をしているときは、環もどこか彼女を心配そうに見つめていた。りんが新潟へと旅立ったことで、直美と過ごす時間が多くなった影響もあるのだろう。「直美さんの声がしたから起きてきた」と近づいてくる環に直美もメロメロ。寝ている環を見て「寝てるときがいちばんかわいい」という彼女のなかには、環を愛おしく思う気持ちが膨らんでいる。
そして、直美が実の娘を思うような優しい瞳で環を見つめるように、環もまた直美の前では柔らかい表情を垣間見せる。直美が落ち込んだり、遠くを見てぼんやりしているときは、どうにかして元気を出してほしいと願う切実な気持ちが浮かぶ。純真で聡明な環が2人の母親を思う気持ちが、ふとした瞬間の英茉の表情に表れるのだ。
朝ドラの主人公が娘を出産するシーンが物語の序盤で登場するのは珍しいと思ったが、その分、幼い環を演じる英茉のお芝居をじっくりと見守ることができた。りんのもとで素直にまっすぐ成長してきた彼女が、これからどのような人生を歩むのか。環を演じる英茉の成長とともに、これからも温かく見守っていきたい。
■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK