なぜ“ミドサー”主人公がドラマで急増? 仲里依紗主演『Tokyo middle 30』から紐解く

 2026年夏ドラマでは、『Tokyo middle 30』(フジテレビ系)、『35歳、今さら恋とかありえない』(TOKYO MX)、『エミリとマリア』(MBS)など、“ミドサー”(30代半ば)の女性を主人公に据えた作品が相次いでいる。かつて30歳が人生の大きな分岐点として描かれることが多かったドラマにおいて、なぜ今「35歳」が物語の中心になっているのだろうか。

 中国で大ヒットしたドラマ『30女の思うこと~上海女子物語~』を原作とする『Tokyo middle 30』では、35歳になった幼なじみ3人が、恋愛、仕事、家庭というそれぞれ異なる悩みを抱えながら、自分らしい人生を模索していく姿が描かれる。本作をフックに、30代女性を取り巻くドラマの変化について、毎クール20本以上のドラマを視聴するドラマウォッチャー・明日菜子氏に話を聞いた。

 まず明日菜子氏は、近年ミドサー主人公の作品が増えている背景について、「人生の分岐点そのもののタイミングが変化している」と分析する。

「2011年の『私が恋愛できない理由』(フジテレビ系)は、メインキャラクターが27歳、24歳、22歳と、20代の女性たちをメインに据えた物語でした。一方で、2017年の『東京タラレバ娘』(日本テレビ系)は、原作漫画では33歳だった主人公が、ドラマ版では30歳に変更されています。そう考えると、テレビドラマの主人公の年齢はここ数年でぐっと上がってきた印象があります。その背景には、やっぱり晩婚化やライフスタイルの多様化があります。10年ほど前までは、女性にとって30歳が人生を決める大きな節目とされていましたが、昨今はその感覚が35歳前後まで後ろ倒しになっているような気がします」

 そもそも、こうした作品は実際に同世代から支持されているのだろうか。

「私の肌感ですが、30代もちゃんと盛り上がっている……というか、どんなふうに描かれるのか気になりますよね(笑)。ミドサー世代は平成初期生まれなので、平成リバイバルがひとつのブームになっている今、彼女たちの人生を通して、自分たちが歩んできた時代を振り返る人も多いのではないでしょうか。少し上の世代にとっても、重ね合わせやすい部分があるのかもしれません」

 制作側の狙いについて話が及ぶと、「今は30代という世代だからこそ描ける物語がある」と語る。

「主人公が20代前半の物語を描いても、その世代はそもそもテレビドラマをあまり観ないという口惜しさはありますよね。30代はテレビ視聴が根付いていた世代ですし、独身の人もいれば、結婚している人もいる。子どもが欲しい人もいれば、そうではない人もいる。メタ的に言えば、本当にいろんな物語を背負わせやすい世代だからこそ、ドラマとして描けるテーマも自然と増えていく。今は全体的に30代以上の物語への需要が高まっているようにも感じています」

 こうした時代の変化を象徴する作品として明日菜子氏が言及するのが、『Tokyo middle 30』だ。特に印象的だったのが、のん演じる山地遥というキャラクターだったという。

「第1話で遥が『シミが増えてきた』と口にするシーンにネットが騒然としていましたが、そもそものんさんが35歳の役を演じることに驚いた人も多かったはず。でも、のんさん自身も現在33歳なので、実年齢に近いキャラクターなんですよね。有村架純さんや波瑠さんをはじめ、第一線で活躍する女優さんたちも30代半ばになってきて、この年代の物語の担い手が増えてきた。だからこそ、30代を描く作品も自然と増えているんじゃないでしょうか」

 遥は仕事でも実績を残す独身女性でありながら、「一人で生きていける気がしない」と結婚への思いを吐露するキャラクターだ。その描かれ方にも、10年前との価値観の変化を感じたという。

「『東京タラレバ娘』が放送されていた頃は、“女性は30歳くらいで結婚するよね”という価値観がまだ根付いていた時代だと思います。けれど、“結婚だけが人生じゃない”という考え方も少しずつ広がり始めていて、結婚をゴールに置かない女性の物語が、一つのエンパワーメントになっていた。むしろ今は“結婚すべき”という考えのほうが、時代にそぐわないものとして捉えられるようになってきています。その中で、遥はちゃんと仕事もあって、一人でも生きていける力がある。それでも『一人では生きていける気がしない』という不安を抱えているんですよね」

 その“不安”こそが、2026年という時代を映し出していると続ける。

「結婚という形だけではありませんが、一人ではなく、誰かと支え合って生きていきたいという感覚が、今の時代らしい価値観だと思いました。2026年はバディものや共同体を描く作品が多く、不安定な時代だからこそ、一人で生きるのではなく、誰かと支え合って生きる物語が求められているような気がします。遥のような人がいる『Tokyo middle 30』も、2026年の現在地を映した作品だと思いました」

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