『さよならノワール』は警察ドラマの価値観を変える一作に “被害者”に光を当てる意義

 夏海は刑事としての経験を、絵梨子は心理学者としての知識を活かして、被害者と向き合っていく。ふたりは心に大きな傷を負った人々に手を差し伸べる立場にあるが、彼女たちだって決して完璧な人間ではない。その様子は各エピソード内に収められた言動から察することができるし、ふたりもまた、それぞれが心に傷を抱えている。

 被害者を救おうだなんて、大それたことは考えていない。事件当事者の心情を理解したふりもしない。ただふたりは懸命に、寄り添おうとする。やがて、彼女らと心を通わせた人々は私たちの目に、いくらか救われているように映る。そしてそれは、被害者だけではない。この交流を経て、夏海と絵梨子にも少しずつ変化が見えてきた。そう、これは人と人とのつながりや、個人間の特別な関係性にこそ光を当てた、まさしく“希望”の物語なのだ。

 これまでほとんど取り上げられることがなかったこともあり、本作との触れ合いの中で「犯罪被害者支援室」の存在を知った方は多いことだろう。しかし、その誕生はいまから30年も前のことらしい。オウム真理教による「地下鉄サリン事件」から、約1年後のことだ。

 何か事件が起きたとき、その実態がどんなものであるのかや、犯人が犯行に至った経緯ばかりが注目される。そしてそこで被害者たちが漏らす悲痛な叫びは、“かそけき声”として扱われてきた。被害者は生きているかぎり、被害者としての人生を続けていかなければならない。その人生がどのようなものになるのかは、決して本人たち次第ではないだろう。この社会で生きる私たちの誰もが、もしかすると関わりを持っているのではないか。それをそっと教えてくれるのが、この『さよならノワール』なのである。

■放送情報
『さよならノワール』
フジテレビ系にて、毎週火曜21:00~21:54放送中
出演:小池栄子、北香那、岡山天音、荒川良々、味方良介、濱尾ノリタカ、利重剛、眞島秀和、岡部たかし、浅野和之、戸田恵子、渡部篤郎 他
脚本:井上由美子
演出:河毛俊作、清矢明子、柳沢凌介
音楽:菊地成孔
主題歌:chilldspot「ドラマ」(RECA Records)
衣装:伊賀大介
心理監修:石橋昭良(臨床心理士/非行臨床研究所)
警察監修:石坂隆昌(ユヌ・ファクトリー)
プロデュース:狩野雄太(スタジオ戦略本部 第1スタジオ ドラマ・映画制作センター)
制作プロデューサー:清家優輝、岸川正史(ファインエンターテイメント)
制作協力:ファインエンターテイメント
制作著作:フジテレビジョン
©︎フジテレビ
公式サイト:https://www.fujitv.co.jp/sayonaranoir-cx/
公式X(旧Twitter):https://x.com/sayonaranoir_cx

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