『風、薫る』“直美”上坂樹里を支えてきた“小川”甲斐翔真 2人の関係は進展するのか?

 NHK連続テレビ小説『風、薫る』第17週では、直美(上坂樹里)の母親探しが最終局面を迎えている。生後間もない直美を教会に預けた母親の正体が、どうやら瑞穂屋の従業員・文(内田慈)であることが分かってきた。りん(見上愛)の母・美津(水野美紀)が働いていることもあり、以前から瑞穂屋に出入りしていた直美。まさに、灯台下暗しだ。

 直美を我が子のように見守ってきた吉江(原田泰造)は、人生の節目を迎えた彼女に「直美さんは頑張って、看護婦になって、友を見つけて、家族になって……今の直美さんが自分で幸せになったんですよ」と告げる。その言葉通り、直美は過酷な幼少期を過ごしながらも、持ち前の野心とバイタリティで自らの人生を切り開いてきた。

 そんな直美を支えてきた一人に、小川(甲斐翔真)がいる。第63話で、直美が担当する入院患者・陣内(細川岳)の友人として登場した小川。食事制限中の陣内に彼がぼた餅を食べさせようとし、直美がきつく叱ったのが、2人の最初の出会いだった。

 当時の女性としては先進的な生き方をしている直美と、「女なら、もっと優しく」とナチュラルに女性を型にはめようとする小川は相性最悪。と思いきや、潮目が変わったのは小川の次の登場回である第65話だ。

 もしかしたら陸軍二等軍曹である小川は、これまで良妻賢母的な女性しか見てこなかったのかもしれない。しかし、看護婦という職業があること、直美が看護婦総取締という役職についていることを知り、彼女を見る目が変わった小川は「先日は失礼しました」と素直に謝罪。また、病院で一緒にお団子を食べた際には、「大家さんのようなおなごは初めてやけん。働いている姿がりりしゅうて気持ちよか。尊敬しよってん」と敬愛とも恋慕ともまだ判別がつかない気持ちをありのまま伝え、直美を困惑させた。陣内の退院後も直美に会いにこようとし、キッパリ断られても小川は引き下がらず、「じゃあ、どうすれば?」と本人に尋ねる。そんな肩の抜けた返しに、軍人と聞いて寛太(藤原季節)に騙された苦い過去を思い出した直美の警戒心も解かれたようだ。

 直美は幼い頃から親に捨てられたというだけで差別を受けていたため、基本的に人を信用していない。「“正しい”で生きられる幸せな人が嫌い」と、善意すらも疑ってしまうのが彼女だ。その反面、りんや吉江のように素直で邪気がなく、ちょっと天然な人にはめっぽう弱いところもある。小川も2人と似たタイプなので、直美はどこか放っておけないのではないか。小川のストレートなアプローチに根負けし、最後は自ら「じゃあ、友達になりましょう」と提案した。

 第78話では、小川にりんとの出会いや、環(英茉)の2人目の“お母さん”になったことを嬉しそうに話す直美の姿があった。今まではあまり見たことがない、本当に相手に心を許していることがわかる笑顔だった。「すみませんベラベラと。小川さん聞き上手だから」と我に返る直美に、「嬉しいです。大家さんの話が聞けて」と返す小川。その温かな人柄に触れるたびに直美も素直になっていく。実に微笑ましい関係だ。

 ただ気になるのは、直美は寛太とも心を通じ合わせていること。最初は騙し合いから始まった2人の関係だが、互いに天涯孤独という共通点があるため、憎まれ口を叩き合いながらもどこかで共鳴している。寛太は金にもならないのに直美の母親探しを手伝い、文のことも調べてくれた。しかしながら、直美にとって寛太はどちらかといえば同志に近いのではないか。良いコンビではあるが、恋愛関係になると傷の舐め合いのようになって、うまくいかないような気がする。

 小川なら直美の過去を丸ごと受け入れながらも、2人で新しい幸せを築いていけそうだ。何より直美のモチーフになっている鈴木雅の夫は軍人だったので、今後、小川と結婚する可能性は高い。一方で、鈴木雅に関する資料は少なく、それに伴って直美もオリジナル要素が強いキャラクターになっている。鈴木雅は幕臣の娘で、フェリス女学院の前身である女学校で学んだ後に結婚。2人の子供をもうけるが、夫が西南戦争で負った傷が元で亡くなり、その出来事をきっかけに看護の道を志したという。その辺りのエピソードが別の形でドラマに反映される可能性もあり、直美と小川には結ばれてほしいが、時代的にもうすぐ日清戦争が始まることを考えると少々不安だ。今はただ、2人の穏やかな時間が少しでも長く続いてほしいと願わずにはいられない。

■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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