小池栄子が『さよならノワール』で得た気づき 「もっと優しくなれたんじゃないか」
『鎌倉殿の13人』(NHK総合)での北条政子役をはじめ、『新宿野戦病院』(フジテレビ系)やNetflixシリーズ『地面師たち』など、近年も話題作で確かな存在感を放ち続けている小池栄子。直近の主演作『ムショラン三ツ星』(NHK総合)を経て、今度はドラマ『さよならノワール』(フジテレビ系)で主演として新たな物語を牽引する。
本作は、西池袋署に新設された犯罪被害者支援室を舞台にした警察ヒューマンドラマ。小池が演じるのは、元“マル暴”刑事で、現在は犯罪被害者支援室に所属する警部補・黒木夏海。帝都大学から出向してきた心理学者・白石絵梨子(北香那)とともに、事件に巻き込まれた被害者や遺族と向き合っていく。
夏海を演じるうえで小池が向き合ったのは、相手を思う気持ちだけでは届かない“支援”の難しさだった。犯罪被害者や遺族に寄り添う役柄を通して見えてきたもの、北とのバディとしての関係性、そして本作を通して自身の中に起きた変化について話を聞いた。
「乗り越える」という言葉はもう使わないようにしようと思いました
――『さよならノワール』は、犯罪被害者支援室を舞台にした作品です。台本を読まれたとき、最初にどのような印象を持ちましたか?
小池栄子(以下、小池):被害者にここまでスポットを当てる作品は、確かに珍しいのかもしれないと思いました。刑事ドラマにも被害者は出てきますが、犯人を逮捕することが最優先に描かれる作品が多いように思います。でもこの作品は、事件のあとに残された人たちに最後まで寄り添う姿を見せていく。そこが斬新だなと思いましたし、犯罪被害者支援という仕事があることを知ってもらうことが、私たちがこのドラマをやる意味なんだろうなと思いました。
――第1話を観ると、寄り添うことの難しさがとても強く伝わってきました。さくら(北乃きい)とのやり取りでも、どこまで踏み込むのか、その線引きがすごく繊細に描かれていましたよね。
小池:本当に難しかったです。演じながら「私、冷たくないですか?」と、何度も聞いていました。夏海はもともと“マル暴”にいた人間なので、そちらにいたときのほうが大変さの種類は違うけれど、やりがいや達成感はわかりやすかったと思うんです。犯人を捕まえるという目的もはっきりしているし、彼女には向いていたのかもしれない。でも、支援室に異動して、犯罪被害者や遺族と向き合うことになる。すごくセンシティブな部分に触れる仕事なので、ちょっとした声がけで相手を壊してしまう可能性もあるんです。そのさじ加減は本当に難しかったです。
――夏海自身も、支援室でのあり方を模索している途中の人物でもありますよね。
小池:そうだと思います。彼女もある意味、犯罪被害者なんだよねということは、物語の中で大きなテーマとしてあります。彼女自身のバックグラウンドがあるからこそ、「こうあるべきだ」と思っている部分もある。でも、被害者の方と接しながら、吸収して、学んでいる最中なんじゃないかなと。絵梨子が来て助かっている部分もたくさんあると思いますし、戸田恵子さん演じる室長が守ってくれることもある。夏海に足りないものを周りがフォローしてくれるからこそ、彼女も支援室の中に居場所を見つけていくのかなと思いました。
――さくらが「夫の死は乗り越えるべきものなのか」と問いかける場面も印象的でした。
小池:あれは刺さりますよね。大切な人を亡くした方に対して、「忘れる日が来るよ」とまでは言わなくても、「乗り越えられるよ」とか「元の生活に戻れるよ」に近い言葉をかけてしまうことはあると思うんです。でも、その人がいなくなってしまった以上、元の生活には絶対に戻れないじゃないですか。だから、「乗り越える」という言葉は、この先使わないようにしようと思いました。乗り越えるというよりも、その喪失を抱えた今の自分と一緒に生きていく、ということなのかなと。まずはその状況を自分自身で認めてあげることが、第一歩なんだろうなと思いました。
――作品全体のトーンも、これまでの小池さんの出演作とはまた違う印象があります。かなりロートーンで進んでいく作品ですよね。
小池:唯一、少し空気を変えてくれるのが絵梨子ぐらいで、刑事チームはテンションとしてはかなり抑えられている。視聴者のみなさんがどう受け止めるのかは正直わからないですし、作品のトーンとしても挑戦的な部分はあると思います。でも、こういう作品があってもいいんじゃないかなと思うんです。わかりやすいだけが全てではないですし、チャレンジした作品だと思います。だからこそ、何かしら反応してもらえたらうれしいです。その反応をきっかけに、犯罪被害者支援室の存在を知ってもらうことが、私の中では大きな目的でもあるので。
――当事者にならないとなかなか知る機会がない支援でもありますよね。
小池:そうですよね。でも、当事者にならなくても知っていたら誰かに教えてあげられるじゃないですか。困っている人がいたときに、「こういう機関があるらしいよ」と伝えられる。そういう人が増えたらすごくうれしいです。