『風、薫る』りんと直美が“家族”になるための第一歩 “寛太”藤原季節の優しさが滲み出る

 NHK連続テレビ小説『風、薫る』第68話では、りん(見上愛)と直美(上坂樹里)が“家族”になるための第一歩が描かれた。

 ツヤ(東野絢香)だけでなくヒデ(池田朱那)も看護婦になることを辞めてしまい、自分を責めるりん。さらに外科の看護婦取締も直美と交代することになってしまい、仕事上ではギクシャクする2人。しかし、一緒に住んでいる家では険悪になることはなく、平和に暮らしているようだ。

 そんな中、美津(水野美紀)が新居を見つけてきて、直美も一緒に引っ越しすることを提案する。最初から直美と暮らすつもりで広さも考えたというのだから、美津の中では、直美はすでに“一緒にいるべき人”になっているのだろう。そこに血のつながりの有無は関係ない。同じような考えのりんも賛成するが、直美の返事は曖昧だ。一緒に暮らしていれば働いてるりんも直美もお互いに助かるし、環(英茉)も直美には懐いていて、遊び相手になってくれれば嬉しい。こうしてりんは直美を家族のように扱ってくれるが、直美にとってはそれが逆に居心地が悪いようで「家族と、家族みたいは違うでしょ」と言ってしまう。

 母親をはじめとした肉親を知らなかった直美にとって“家族”というのはとても大切なもので、“家族”と“家族みたいなもの”の間には雲泥の差があるのだろう。本音を言えば直美の気持ちはりんや美津と同じで、これからもずっと今のように暮らしていきたいと思っているはずだ。だが、“家族みたいなもの”の自分が、はっきりとりんたちを“家族”というのはなんだかおこがましく、さらに、まだ生きているかもしれない母親への希望も捨てたようになってしまう。「でももし嫌じゃなかったら、考えてみて」というお願いに「うん」と言葉少なく返事をした直美には、そんな複雑な心情が感じられた。

 そうして悩む直美のところにやってきたのはなんと詐欺師の寛太(藤原季節)だった。しかも仕事帰りのりんを尾行する形で家を特定してきたのだからタチが悪い。

「直美さんのご友人でしたか」

「そう」「違う」

「あの、よかったら中で」

「そうですか、それはかたじけない」「大丈夫です」

 久しぶりに会ったというのに、直美と寛太の息はピッタリで、りんとの会話にはあまりないテンポの良さがあり、寛太が来るときはろくなことにならないとわかってはいてもその空気感の良さにニヤリとしてしまう。

 立派な身なりをしている寛太は現在、憲法発布をしているという……のは口実で、やはりろくでもない詐欺をして生活しているようだ。でも、その中で直美が持っている浦崎八幡のお守りが、熱海では有名な安産祈願のものであることを突き止めたという。寛太はわざわざそれを、東京に帰ってきて、教会に直美の居場所を訪ねて、そしてりんをつけてまでして知らせに来たのだ。しかも今後も何か分かれば伝えたいよう。やり方はいつも間違っているが、寛太の不器用な優しさが伝わってくる。

 だが、直美がもうすぐ引っ越すかもしれないというと、寛太はすぐ直美の状況を察知し、「あの一家と家族ごっこで満たされてるか」と嫌味ったらしく言った。育った環境が似ている2人は、突かれると痛いところも同じらしい。それを聞いて黙っていられなかったのがりんだ。2人が話しているところに割って入って「どなたか知りませんが、直美さんも家族みんなで引っ越しますんで」となぜか直美も睨むように言い切って寛太を追い返していた。病院でもこの剣幕を出せたらいいのにと思ってしまうほど、鬼気迫る様子がりんからは感じられた。

 一方で、まだまだ自分の“生業”を決めかねているのがシマケン(佐野晶哉)である。シマケンは自分の小説を世に売り出したいが、彼が読んだものを評論する書評が人気を博してしまう。

 りんと直美は引っ越しの荷造りをしているときに、書物をまとめるのにも手間取ってしまう直美をりんが手伝って「向いてる方が向いてることやればいいじゃない」と言っていた。その言葉をシマケンが聞いたら、すぐにでも泣きそうになっている顔を少しでも晴らすことができるのだろうか。

■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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