『タツキ先生は甘すぎる!』と『放課後カルテ』の共通点 “当事者”のリアルを描く傑作に

 『タツキ先生は甘すぎる!』(日本テレビ系)第8話では、海音(池村碧彩)のエピソードを通して、タツキ(町田啓太)が自身の中に残る古傷を癒していく姿が描かれた。タツキが息子・蒼空(山岸想)と向き合う準備がやっと整ったといえる。

 本作の特徴は、言葉で子どもたちの思いを決めつけすぎることがないよう、登場人物の考えを画面全体からにじませるような演出だ。さまざまな事情を抱える子どもたちが集まるフリースクールが題材になっているからこその、細やかさだろう。

 この丁寧に積み上げられた繊細な演出を見ていると、2024年10月クールの『放課後カルテ』を思い出す。『放課後カルテ』(日本テレビ系)は、小学校の保健室に勤務する学校医・牧野(松下洸平)が主人公の物語。本作も、『タツキ先生は甘すぎる!』と同様に、さまざまな心身の不調に見舞われる小学生たちの思いをセリフで表現しすぎることなく、映像で心象表現を見せることにこだわっていた。題材や実際に苦しむ子どもたちへの誠意、説明しすぎなくても伝わるという視聴者への信頼が見える作品だった。

 この2作に似た空気があるのも当然だろう。『タツキ先生は甘すぎる!』は『放課後カルテ』の演出とプロデューサーが再集結した作品だからだ。一方で、『放課後カルテ』は原作を元にした作品であるのに対し、『タツキ先生は甘すぎる!』はオリジナル作品。『タツキ先生は甘すぎる!』では、『放課後カルテ』で工夫されていた小学生たちの心情の描き方を生かしながら、『放課後カルテ』では描ききれなかった学校に通うことができなくなった小学生たちを描いているのだ。

 また、『放課後カルテ』はナルコレプシーや場面緘黙症、精神不安定による破壊衝動など、見逃されたり、無理やり指導を受けたりするような疾患を描きながら、辛さをすべて言葉にできるわけではない子どもたちに、大人はどう向き合うべきかを社会に投げかけた作品だった。

 『タツキ先生は甘すぎる!』でも、学校に行けないという事実の裏にある多種多様な事情が描かれている。

 特に印象的だったのは第1話。重要な初回で、早乙女綾香(藤本唯千夏)が不登校になった理由を明確にしなかった。一方で、綾香が教室で感じてしまうどうしようもない孤独感や恐怖感は、スロー映像を用いながら時間をかけてしっかりと映し出していた。綾香自身も分からない苦しみによって学校に行きたくないと思ってしまうこと、不登校に言葉にできるような理由が必ずしもあるわけでないことを、第1話で突きつけたのだ。

 また、本作は不登校の裏側にある親子のコミュニケーションを描きながらも、腹を割って対話をして、万事解決としないエピソードも多い。主人公であるタツキ自身も第7話では海音の事情に入り込みすぎて、関わり方を間違える描写もあった。ドラマだからといって簡単に解決に導かない点も、大人を絶対に正しい存在として描かない点も、不登校のリアルを伝えるために必要なことだろう。

 『放課後カルテ』も『タツキ先生は甘すぎる!』も、当事者でないと見えづらいもののリアルを、ドラマとして世の中に提示している。親と子の今を知る上で、大きな社会意義がある作品だ。

 「ユカナイ」での生活とさまざまな子どもたちに向き合った経験、自分自身の過去の傷に触れた経験を経て、タツキは蒼空に何を語りかけるのか。こじれてしまった父子関係はどのようにほぐれていくのか。その過程を見届けられる最終章に期待したい。

■放送情報
『タツキ先生は甘すぎる!』
日本テレビ系にて、毎週土曜21:00〜放送
出演:町田啓太、松本穂香、藤本美貴、寺田心、三遊亭好楽、比嘉愛未、江口洋介
脚本:徳尾浩司
演出:鈴木勇馬、松下敏也、苗代祐史
音楽:得田真裕
主題歌:福山雅治「拍手喝采」(アミューズ/Polydor Records)
フリースクール監修:石井しこう
アートセラピー監修:浜端望美
企画協力:前田志門
プロデューサー:岩崎秀紀、秋元孝之、大護彰子
チーフプロデューサー:荻野哲弘
制作協力:オフィスクレッシェンド
製作著作:日本テレビ
©日本テレビ
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