“俳優”濵田雅功はなぜ愛されたのか? 『人生は上々だ』など90年代を知るドラマ評論家が熱弁
ダウンタウンの浜田雅功が俳優名義の“濵田雅功”として、Netflixシリーズ『俺のこと、なんか言ってた?』に出演することが発表された。浜田がドラマに出演するのは実に16年ぶりとなる。
濵田雅功、『俺のこと、なんか言ってた?』で16年ぶりドラマ出演 役所広司のライバル役に
10月にNetflixで独占配信される役所広司主演のNetflixシリーズ『俺のこと、なんか言ってた?』に濵田雅功が出演すること…お笑い芸人として確固たる地位を築いている浜田だが、特に1990年代は俳優としても活躍していた。当時を知るドラマ評論家の成馬零一氏は、「人情味のある芝居」が魅力だったと振り返る。
「1990年代の浜田さんは、テレビではダウンタウンとしての活躍が盛り上がりはじめた時期でしたが、若手俳優としても人気で、TBS系のコメディドラマに定期的に出演して、“大阪から出てきた口調は乱暴で恐そうに見えるけど、根っこの部分はすごく優しいチンピラ風の若者”として、とても人情味のある芝居をしていたのを覚えています。木村拓哉さんとW主演を務めた『人生は上々だ』(1995年/TBS系)や子役時代の濱田岳さんと共演した『ひとりぼっちの君に』(1998年/TBS系)、は個人的にお気に入りの作品で、三谷幸喜さんが脚本を書いたコメディテイストの時代劇『竜馬におまかせ!』(1996年/日本テレビ系)もすごく好きでした。2000年代に入るとダウンタウンとしてのレギュラー番組が増えて多忙になったこともあり、俳優の仕事は少しずつ減っていきますが、その頃の代表的な主演作は『明日があるさ』(2001年/日本テレビ系)あたりですかね。もっと演技の仕事を見たいと思っていたので、今回の出演は嬉しいです」
『俺のこと、なんか言ってた?』の脚本を手がけるのは宮藤官九郎。成馬氏曰く、宮藤のルーツは浜田と「対照的」だが、この座組はどんな化学反応をもたらすのだろうか。
「宮藤さんはダウンタウンと違って“東京のお笑い”にルーツを持つ作家です。特に『ビートたけしのオールナイトニッポン』(ニッポン放送)の放送作家・高田文夫さんの影響から上京して大人計画に参加した、という経歴があります。そして2000年に『池袋ウエストゲートパーク』(TBS系)、2002年に『木更津キャッツアイ』(TBS系)と続いていきますが、ちょうど浜田さんの俳優としての露出が減っていった時期に、対照的なお笑いのルーツを持つクリエイターとして登場しました。また、かつて『ダウンタウンのごっつええ感じ』(1991年〜1997年/フジテレビ系)などのテレビ番組が担っていた、作り込まれたコントバラエティが少しずつ減っていき、ドキュメンタリー番組やトーク番組がテレビのお笑いの主流となっていく中で、コントバラエティーの流れをを継承したようなテレビドラマが増えていくのですが、そこで宮藤さんのドラマは大きな貢献を果たしています。その先駆けといえるのが堤幸彦さんが演出を務めた作品で、『池袋ウエストゲートパーク』、『トリック』(2000年/テレビ朝日系)でドラマの中にコント的な要素を取り入れはじめていて、『木更津キャッツアイ』以降の宮藤さんが脚本を書かれたドラマも、堤さんのドラマから枝分かれした作品だといえます。現在は福田雄一さんやバカリズムさんのドラマが、“コントバラエティー”として楽しまれていて、本家のテレビバラエティでは途絶えた流れが、テレビドラマの中で生き残ったといえます。だから“ダウンタウン的なもの”と“宮藤官九郎的なもの”は2000年代に奇妙な形で交差していて、しかしうまい具合に噛み合わなかったんだなと思います」
時代の風雲児、あるいは時に異端児としてテレビ業界に現れ、そして時代を象徴する人物になっていった浜田と宮藤。成馬氏は、現在Netflixで配信中の『地獄で落ちるわよ』にも触れながら、2000年代までの芸能史を理解するうえで『俺のこと、なんか言ってた?』が重要作になると位置付け、こう続けた。
「細木数子さんを題材にした『地獄で落ちるわよ』も象徴的ですが、テレビの役割を奪おうとしているNetflixのほうが自由で俗悪だった“テレビ”の伝統を結果的に継承している状況には、皮肉なものを感じますね。宮藤さんも登場しはじめた頃は演劇という外部の世界から現れた、テレビ業界をかき乱していくプレイヤーだと思われていたのですが、ある段階からむしろ彼も“テレビ”側の人間だったんだとわかってくる。『あまちゃん』(2013年/NHK総合)くらいの時期から特にそう思えてきて、気がつけばテレビの伝統を、いってしまえば“最後に”引き継いだ人になっています。それが『不適切にもほどがある!』(2024年/TBS系)に至り、本人が年齢を重ねたこともあり、ある段階から若者側の人間ではなくなっていくんですよね。同じことはダウンタウンにもいえると思います。現在は両者とも配信プラットフォームで発信をしていて、これは昔だったらテレビに居場所がなくなったからだと解釈されるんでしょうけれど、というよりはむしろ予算やコンプライアンスの問題でテレビのほうが彼らを支えきれなくなったという印象のほうが強い」
本作のプロデューサーである磯山晶も、新人社員時代に浜田と出会っていたと語っている(※)。宮藤とダウンタウンの奇妙な並走然り、日本の芸能史を振り返ってみると『俺のこと、なんか言ってた?』は重要な作品になるかもしれない。
参照
※ https://realsound.jp/movie/2026/05/post-2394538.html
◾️配信情報
Netflixシリーズ『俺のこと、なんか言ってた?』
Netflixにて、10月世界独占配信
出演:役所広司、濵田雅功
監督:金子文紀、坂上卓哉、渡部篤史
脚本: 宮藤官九郎
企画・プロデューサー: 磯山晶
エグゼクティブ・プロデューサー: 岡野真紀子(Netflix)
プロデューサー: 下村和也
制作プロダクション: THE SEVEN
製作: Netflix