『エール』“ミュージックティーチャー”から6年 古川雄大が『風、薫る』で新たな顔に

 NHK連続テレビ小説『風、薫る』の第7週「届かぬ声」の予告で古川雄大の姿が映った瞬間、SNSでは大きな反響があった。

 本作で古川雄大が演じるのは、当時の最先端医療をドイツで学んだ今井益男というエリート医師。りん(見上愛)や直美(上坂樹里)たちが梅岡看護婦養成所から実習に出向く帝都医科附属病院のクールな外科教授として、颯爽と登場する。

“ミュージックティーチャー”が残した鮮明な記憶

 古川雄大が朝ドラに出演するのは、『エール』(2020年度前期)以来6年ぶりとなる。とはいえ、6年も前のこととは思えないほど、「ミュージックティーチャー」こと御手洗清太郎役は、圧倒的な存在感で鮮明な印象を残した。ちなみに『エール』の御手洗清太郎も、本作のエリート医師・今井益男も「ドイツ留学の経験がある」という共通点がある。

 『エール』の主人公・古山裕一(窪田正孝)の妻であり、声楽を学ぶ関内音(二階堂ふみ)の個人レッスンを引き受けたのが御手洗だった。

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 彼はドイツで音楽の才能を認められたことで、改めて自分と向き合えたという背景を持つ。「先生」と呼ばれると日本でのつらい過去を思い出してしまうため、「ミュージックティーチャー」という呼び方にこだわる。音とのやりとりは明るく楽しいが、過去の葛藤や救済された経験を奥底に秘めた複雑な人物像が鮮やかに表現されており、だからこそ視聴者の記憶に深く刻まれたのだろう。

 『エール』に出演する以前の古川は、『エリザベート』『ロミオ&ジュリエット』『モーツァルト!』などのミュージカル界で活躍し、第9回岩谷時子賞奨励賞、第44回菊田一夫演劇賞を受賞するなど確固たる実績を持っていた。

 その後、映像作品でもめざましい活躍を見せる。水10ドラマ『わたしのお嫁くん』(フジテレビ系)では、主人公の速見穂香(波瑠)と家事力の高い山本知博(高杉真宙)を見守る、個性的で弟思いの兄・山本薫役で存在感を示した。

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 さらに、森下佳子脚本による時代劇『大奥 Season2』幕末編(2023年)では、老中の阿部正弘(瀧内公美)に見出され、大奥総取締になる瀧山役で出演。初めての時代劇とは思えないほど、花魁姿と武士の扮装のどちらも美しく着こなし、視聴者を魅了した。

 そして記憶に新しいのが、大河ドラマ初出演にして好演が話題となった『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(2025年)の北尾政演(山東京伝)役だ。

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 『べらぼう』の北尾政演は、「『べらぼう』の中でいちばんの“陽キャ”」であり、チャラい性格の天才絵師。同時に劇作家としても才を発揮したヒットメーカーである。吉原に出入りしているうちに主人公の蔦重(横浜流星)と知り合い、蔦重プロデュースのもとヒット作を生み出し、やがて名パートナーと呼べる関係になっていった。

 吉原で遊ぶのに夢中でチャラそうに振る舞ってはいても、能天気に何も考えていないわけではなく、天才作家という肩書きにあぐらをかいて努力していないわけでもない。努力しているからこそ時代に合う作品を生み出すことができるのだが、政演は「頑張ってるアピール」をダサいと思っているタイプだった。根っからの江戸っ子(深川生まれ)で、陰で努力はしても人前ではそれを見せないのが「粋」だというスタイルを貫いていたのだ。

 「つったじゅうさ~ん」と歌うような独特の呼び方で蔦重に絡み、遊び人のような振る舞いをしても、どこか品があって憎めない政演を、古川雄大は軽やかに演じきった。あのチャーミングな笑顔が深く記憶に刻まれているというファンにとって、今回の朝ドラ出演はまさに朗報だ。

 『風、薫る』の外科教授・今井益男役では、これまでとはまた違う新しい表情を見せてくれるに違いない。りんや直美たちが大学病院で実習を始めるにあたり、洋装の紺色の実習服に変わり、看護についてより深く物語が動き始める。本作でも古川雄大がその独特の魅力を放ち、物語を大いに盛り上げてくれることを期待したい。

■放送情報
2026年度前期 連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から土曜8:00~8:15放送 ※土曜は一週間を振り返り ※NHK ONEで同時・見逃し配信あり
NHK BS・BSプレミアム4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送
出演:見上愛、上坂樹里ほか
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
音楽:野見祐二
主題歌:Mrs. GREEN APPLE「風と町」
語り:研ナオコ
制作統括:松園武大、宮本えり子
プロデューサー:葛西勇也、松田恭典
演出:佐々木善春、橋本万葉、新田真三、松本仁志ほか
写真提供=NHK

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