足利義昭ほど性格が変わる人物はいない? 『豊臣兄弟!』尾上右近と歴代大河キャスト比較

 NHK大河ドラマ『豊臣兄弟!』で尾上右近が演じる足利義昭は、機知に富み、リーダーとしての資質を備えた人物として描かれている。教養豊かな文化人であり、野心家としての計算高さも備えた複雑な性格の明智光秀(要潤)が、義昭に素直に従っているところを見ても、その器の大きさがわかる。

 足利義昭の初登場は、第10回「信長上洛」だった。明智光秀が足利義昭の使者として従者を連れて岐阜を訪れ、小一郎(仲野太賀)と藤吉郎(池松壮亮)に岐阜城下を案内した場面のことだ。実は、足利義昭が従者を装って織田信長(小栗旬)に面会に来ていたのである。驚きを隠せない豊臣兄弟と、生真面目そうに緊張感を漂わせる明智光秀を横目に、笑顔を見せる足利義昭の柔軟な対応は印象的だった。

 また、第11回「本圀寺の変」でも義昭の意表を突く行動がSNSで話題になった。義昭が籠る本圀寺を三好三人衆が襲撃した際、小一郎が安全な隠し蔵に義昭を移動させようとすると、激闘が繰り広げられる庭に自ら姿を現し、幕府の兵たちを鼓舞したのだ。

 「わしは、そなたらと共におる! わしは逃げも隠れもせぬ!」と堂々と言い切った義昭。こんなにも責任感があり、好感度の高い人物だからこそ、理知的でクセの強い明智光秀からの尊敬を得られているのだろう。小一郎、藤吉郎とも打ち解け、尊大な態度を取らないばかりか、豊臣兄弟に興味を持ち、高く評価した上で「あの二人、わしのものにできるか?」と明智光秀に言い出すほどだった。

 最近の大河ドラマで足利義昭といえば、『どうする家康』(2023年)で古田新太が演じた“白塗りバカ殿風”の義昭があまりにも斬新すぎて、強烈なインパクトを残した。同じ室町幕府第15代将軍・足利義昭といっても印象が重なることは全くなく、新しいキャラクターの物語として受け入れられるのも、大河ドラマの醍醐味ではある。

 例えば『麒麟がくる』(2020年)で滝藤賢一が義昭として登場したのは、出家して貧しい民に寄り添う「覚慶」と名乗っていた頃からである。将軍である前に、人として自分には何ができるのか、何をすべきかを自問自答する繊細な人物で、穏やかな印象を残す義昭だった。

『麒麟がくる』足利義昭の豹変ぶり 滝藤賢一が無力さゆえの葛藤を体現

光秀(長谷川博己)の身に危険が迫る。NHK大河ドラマ『麒麟がくる』の第35回「義昭、まよいの中で」では、将軍・義昭(滝藤賢一)が…

 戦乱の世で希望を見出そうと葛藤する明智光秀(長谷川博己)と義昭は共鳴しあうも、織田信長(染谷将太)との関係が悪化していくと、義昭は人が変わったように苛立ちや信長への不信感をあらわにしていった。

 本作の主人公である小一郎や藤吉郎の視点では、義昭は守るべき重要人物であると同時に、出会いの場面から親しみやすく、状況変化に応じて臨機応変に対応できる人として描かれている。それとは逆に『どうする家康』の義昭は、徳川家康(松本潤)の目線から描かれていた。

 義昭から上洛の命が下り、家康が家族のための京土産に探していた南蛮菓子のコンフェイト(金平糖)。いよいよ将軍に謁見する際、千鳥足で居眠りしそうな義昭に貴重なコンフェイトを差し出すよう強要されて困惑する家康。仕方なく家康が差し出すと、義昭はフリスクのように口に頬張ったのだ。

『どうする家康』古田新太、信長役・岡田准一の裏側を明かす 「いきなりハグするか?」

毎週日曜日に放送されているNHK大河ドラマ『どうする家康』出演の古田新太よりコメントが寄せられた。  本作は、ひとりの弱き少年…

 ただの俗物ではなく、酔っていても相手を見透かすような眼光の鋭さがあり、このシーンは古田新太の怪演によってそれまでの義昭像が吹き飛ぶくらいの迫力で、SNSの反響も大きかった。

 『どうする家康』の場合、義昭が古田新太、明智光秀は酒向芳で、織田信長役は岡田准一だった。魔王的な要素の強い独善的な振る舞いが目立つ織田信長に、クセが強すぎる義昭と明智光秀。これでは家康も気が休まるときがなく、毎回奮闘するしかなかった。

 一方『麒麟がくる』では、主人公・明智光秀が長谷川博己。そして義昭に滝藤賢一、織田信長には染谷将太が配され、戦に明け暮れる中で変わっていく義昭と信長を、光秀がそばで支えるという物語となっていた。

 さて、本作の義昭と信長はこれからどのように対立を深めていくのだろうか。そして、その関係性の変化によって、明智光秀はどのようなアクションを起こしていくのか。好感の持てる魅力的な足利義昭の姿を、もう少し長く見ていたい気もする。

■放送情報
大河ドラマ『豊臣兄弟!』
NHK総合にて、毎週日曜20:00〜放送/毎週土曜13:05〜再放送
NHK BSにて、毎週日曜18:00〜放送
NHK BSP4Kにて、毎週日曜12:15〜放送/毎週日曜18:00〜再放送
出演:仲野太賀、池松壮亮、吉岡里帆、浜辺美波、白石 聖、坂井真紀、宮澤エマ、倉沢杏菜
大東駿介、松下洸平、中島歩、要潤、山口馬木也、宮﨑あおい、小栗旬ほか
語り:安藤サクラ
脚本:八津弘幸
制作統括:松川博敬、堀内裕介
演出:渡邊良雄、渡辺哲也、田中正
音楽:木村秀彬
時代考証:黒田基樹、柴裕之
プロデューサー:高橋優香子、舟橋哲男、吉岡和彦(展開・プロモーション)、国友茜(広報)
写真提供=NHK

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