『プラダを着た悪魔』が時代を超えて愛される理由 続編へ受け継がれる情熱とスピリッツ

 2006年に公開された映画『プラダを着た悪魔』は、ファッション業界を舞台にしたサクセスストーリーとして、いまなお語り継がれる一本だ。公開から20年が経過した現在でも、その人気は衰えない。5月1日より全国公開される続編『プラダを着た悪魔2』では、主人公アンディ役のアン・ハサウェイ、アンディの元上司であるミランダ役のメリル・ストリープをはじめ、主要キャストの再集結が話題となり、当時のファンを中心に大きな反響が起きている。映画というひとつのランウェイに再び勢ぞろいした俳優たちの姿を見て、「あの頃のまま」と感じた観客も多かったのではないだろうか。

 主要キャストの再集結という出来事は、作品を愛してきた観客に対する“最大級のサービス精神”の表れでもある。たとえばディズニー映画『魔法にかけられて』の続編『魔法にかけられて2』では、15年の歳月を経て、主演のエイミー・アダムスをはじめとするキャストが再び顔をそろえ、あの頃と変わらぬミュージカルを披露し、かつて作品に心を動かされた観客の記憶を呼び起こした。時間を共有してきた俳優とキャラクターの“再会”は、映画が観客の人生に歓びをもたらすサプライズであることを改めて実感させる。『プラダを着た悪魔』もまた、そんな作品のひとつとして名を連ねることだろう。

 本作が長く愛される理由のひとつに、キャリアムービーとして極めて完成度の高い作品であることも挙げられる。ジャーナリスト志望のアンディ(アン・ハサウェイ)が、ファッション誌編集部というタイムリーな反応が要求される職場で成長していく物語は、典型的なサクセスストーリーの構造を持ちながら、単純な成功譚には終わらない。その過程で重要な役割を担うのが、アートディレクターのナイジェル(スタンリー・トゥッチ)だ。ナイジェルは冷酷な上司ミランダ(メリル・ストリープ)の下で働きながらも、アンディの可能性を見抜き、時に厳しく、時に温かく導く存在として描かれる。

 “働く”ことで主人公が成長していく物語において、メンターの存在は主人公の成長を照らす鏡となる。ナイジェルは単なる助言者ではなく、業界の厳しさと誇りの両方を体現する人物だ。彼の言葉によって、アンディは“仕事とは何か”“成功とは何か”という問いに向き合わされる。同時に、彼がファッション業界に身を置いているパーソナルな理由も語られる。働くことは決して社会規範や構造の歯車としてのオートマチックな行為ではなく、そこには必ずといっていいほど従事者ひとりひとりが歩んできた背景がある。この構図を真摯に描いているからこそ、『プラダを着た悪魔』は華やかなファッション映画でありながら、働く意義を考えさせるドラマとして深みを持つことに成功しているのだ。

 そして本作を語るうえで欠かせないのが、鬼編集長ミランダを演じたメリル・ストリープの存在だ。彼女が生み出したミランダ像は、リードでは“有無を言わさぬ恐ろしい上司”だが、氷のような威圧感の裏に、仕事に人生を捧げてきた孤独や葛藤がほのかに滲む。それを巧みに演じきったメリル・ストリープの功労は賞賛すべきであり、複雑な感情をわずかな視線や声色の変化で表現する演技力は圧巻だ。

 パリ出張の夜に、ミランダがアンディに語る静かな告白は映画屈指の名シーンだ。そこでは、完璧に見えた彼女の人生が決して順風満帆ではないことが示唆される。観客は初めて、彼女を“恐れるべき上司”ではなく、ひとりの人間として理解し始める。この多層的な人物像こそ、ストリープという名優の真骨頂と言えるだろう。

 スクリーンの中で働き、迷い、装い続ける彼女たちの姿は、時代が変わってもなお、私たちの背中をそっと押してくれる。『プラダを着た悪魔2』で、時を経て一堂に会する面々。変わらない彼らの「着飾ること」への情熱とスピリッツに、きっと「私も頑張ろう」と奮起させられることだろう。

 ぜひその前に本作に触れ、アンディが踏み出した一歩や、ミランダの静かな眼差し、そしてナイジェルの言葉が持つ意味を味わって、続編への期待へつなげてほしい。

■放送情報
『プラダを着た悪魔』
日本テレビ系にて、4月24日(金)21:00〜22:54放送
出演:メリル・ストリープ(夏木マリ)、アン・ハサウェイ(小林沙苗)、エミリー・ブラント(松谷彼哉)、スタンリー・トゥッチ(岩崎ひろし)
監督:デヴィッド・フランケル
製作:ウェンディ・フィネルマン
脚本:アライン・B・マッケンナ
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