『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』なぜ大ヒット? “共感”を呼ぶ構造を紐解く
娯楽性に全振りしたストーリーと変化球の妙
もうひとつにストーリー。その内容はとことん単純。クッパ率いる軍勢にマリオたちが立ち向かい、最終的にはクッパがやられてハッピーエンド。アクションゲームのマリオ作品の十八番を踏襲し、難しいテーマも皆無な娯楽性全振りの作りになっている。
この潔さも共感を呼び起こす装置として機能していたように思える。元々、アクションゲームに限らず、マリオのゲームは「万人向け」のスタンスを徹底している。子どもから大人、はたまた年配の人たちも楽しめる作風。それを踏まえれば、分かりやすい始まりと結末を設定し、その合間に娯楽性全振りの展開を詰め込んだ構成は、これ以上なくマリオのゲームを体現していると言える。
その上で新しさも盛り込まれている。特に原作ゲームだと助けられる存在として描かれがちのピーチ姫がマリオの相棒的ポジションを務め、逆に弟のルイージが助けられる存在を務める点は映画ならではの新しさの象徴だ。原作ゲームを知る人にも意外性があり、結末は概ね分かっていながらも「どうやってクッパを倒すのか?」という興味を誘う機能として活きていた。
マリオとルイージが普通の人間で、父親と母親といった家族もいるという設定もまた、定番のストーリーにおける意外性を生む要素だ。これらの要素も終盤、思いもよらぬ形で回収されると同時に、『ザ・スーパーマリオブラザーズ ムービー』の名に相応しい兄弟愛が炸裂する結末に向かっていくのも心を熱くするものになっている。
この娯楽性を違和感なく堪能できるよう、日本語版に限り独自の脚本を用意し、それらをマリオ役の宮野真守を筆頭とする実力派の声優陣によって生き生きとしたかたちで表現したのも、最終的な国内での大ヒットという共感を呼んだのは確かだろう。
マリオのゲームにおけるストーリーは娯楽性全振りが定番というわけではなく、例えばRPG系統だと『ペーパーマリオ』シリーズのようにドラマ性を持たせた作品は存在する。だが、マリオのストーリーの定番は娯楽性に全振りしたもの。そして、それゆえの分かりやすさと親しみやすさがあるからこそ、幅広い年代層の共感も呼び起こす要素としてもこの上ない。
こうした初代『スーパーマリオブラザーズ』から40年続く原点を尊重し、タイトルに忠実な娯楽性を押し通しつつ、新しさと違和感の軽減に務めたからこそ、結果的には140億円という数字につながったのかもしれない。
1回観ただけでは網羅できない膨大な小ネタ
ほかに本作には、1度観ただけでは拾いきれない膨大な任天堂タイトルの小ネタが詰め込まれており、ゲームをよく知る層の興味を刺激する仕掛けも凝らされている。
ピザ屋の名前が『パンチアウト!!』だったり、マリオの自室にあるテレビの上に『スターフォックス』のアーウィンの模型が飾られていたり、アンティークショップに歴代『スーパーマリオブラザーズ』シリーズのアイテムが販売されていたりなどなど。
こうした小ネタをどれだけ見つけられるかという、ある種の“収集要素”が存在したのもリピーターを生む原動力になったのは間違いない。本作はすでに劇場や配信で1回観ているが、2回目以降の鑑賞はしていないという人は、今回のテレビ放送の機会に探してみると面白いかもしれない。しかもテレビ放送では、クッパの配下として登場する「ヘイホー」と「ムーチョ」の存在自体が小ネタになるという見どころもある。
「ヘイホー」と「ムーチョ」は、任天堂とフジテレビのコラボによって誕生したファミコンディスクシステム向けアクションゲーム『夢工場ドキドキパニック』(1987年)でデビューした敵キャラクターだ。現在は双方、同作を元にした『スーパーマリオUSA』(1992年 ファミコン)を契機にマリオシリーズの敵キャラクターへと転身している。そんなキャラクターがフジテレビで映るということは……? これ以上はご想像にお任せする。
4月24日には続編『ザ・スーパーマリオギャラクシー・ムービー』も公開され、再び大きな盛り上がりを見せようとしているマリオシリーズ。そんなシリーズが長年大事にしてきた共感を呼び起こす仕組みを前作のテレビ放送を通して再度味わって、来たる続編の公開を待ってみるのはいかがだろうか。
なお、筆者は続編の原作である『スーパーマリオギャラクシー』のNintendo Switch版を事前に遊んでおくことを強くオススメしたい。
特に注目は2作目の『スーパーマリオギャラクシー2』で、前作にも登場する「ルマリー」に関する驚きの新情報が追加されているのだ。これを踏まえて前作、そして新作を観た時、アナタは壮大な世界観を垣間見る……かも?
参照
※ https://realsound.jp/movie/2024/11/post-1851781.html
■放送情報
土曜プレミアム『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』
フジテレビ系にて、4月18日(土)21:00~23:10放送
声の出演:クリス・プラット(宮野真守)、チャーリー・デイ(畠中祐)、アニャ・テイラー=ジョイ(志田有彩)、マイケル・キー(関智一)、ジャック・ブラック(三宅健太)、セス・ローゲン(武田幸史)
監督:アーロン・ホーヴァス、マイケル・ジェレニック
脚本:マシュー・フォーゲル
製作:クリス・メレダンドリ(イルミネーション最高経営責任者)、宮本茂(任天堂株式会社 代表取締役フェロー)
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