香川照之が1人6役を怪演 『連続ドラマW 災』が追求した“これまでにない映像表現”
『連続ドラマW 災』のDVD-BOXが4月8日に発売される。
人は時に突然の不幸に見舞われる。ただ平凡な日常を送るため、コツコツと努力している人にも、無慈悲に「災」は降りかかる。『連続ドラマW 災』で香川照之が演じたのは、もしかしたらその「災」という現象そのものなのかもしれない。
抽象的な表現になってしまったのには理由がある。香川は今作で1人6役を演じるのだが、あるときは塾講師の渡部、あるときはトラック運転手の多田として登場し、別の場所では理容師の志村に、また、旅館の出入り業者の橋岡になる。他にも違う顔を持ち、異なる場所、異なる時系列で出現する。共通点はひとつ、香川が現れたすべての場所で、関わった「誰か」に災いが訪れるのだ。
続いていく日常がある日突然、何の前ぶれもなしに断ち切られる。それは人為的なものなのだけれど、もしかすると誰も関与していないかもしれない。一人なのか、それとも別々の人間なのか。正体が不明で、実体が見えないのだ。各話の主人公の決定的な瞬間に、香川が扮する男たちが関わっていることはうっすらと描かれており、被害者との接点が見える。
ただし、災いをもたらしたのが本当にその男かはわからない。男の犯行は描かれず、わかりやすい答えは用意されていない。謎解きをする人間にふりかかる災難を暗示してドラマは幕を閉じるのだが、私たちに災いの持つ意味を問いかけるようである。
特典映像には、香川照之と今作を手がけた監督集団「5月」の関友太郎、平瀬謙太朗による特別鼎談が収録されている。今作にあらかじめ決まった答えがあるとすれば、この鼎談がもっとも真相に近いに違いない。
鼎談では本作の成り立ちが明かされる。関が言う「初めて観る怖さ、味わったことのない気持ち悪さを作り出す」というコンセプトは、演じ手として香川が参加することで創造性が刺激された。今作を「10年に1本あるかないかの作品」と語る香川は、5月について「隙がないスキルとすべてのポテンシャルを持つ稀有な集団」と称賛を惜しまない。