『風、薫る』北村一輝の“良き父”は『スカーレット』と好対照 りんの人生の転機になるか

 一方、『御上先生』(TBS系)では登場時からラスボスの風格を漂わせていた。北村演じる古代真秀は物語の舞台となる隣徳学院の生徒や教職員から慕われるカリスマ理事長だが、実は裏で政治家や上級官僚の子息を学園に裏口入学させ、多額の寄付金や不当な助成金を受け取っていた。しかし、その根底には日本の教育を変えようとする彼なりの正義があり、完全に悪とは言い切れない余白をもたせた北村の演技が印象的だ。

 そして様々な悪役を演じてきた北村の集大成ともいえるのが、大ヒット上映中の映画『木挽町のあだ討ち』だろう。北村扮する作兵衛はわかりやすいゴロツキの男として登場する。だが……ここから先はぜひとも自分の目で確かめてほしいので言えないが、北村の巧みで鮮やかな人間造形に観せられ、鑑賞後は作兵衛のことしか考えられなくなるのは間違いない。悪人でも善人でも清濁併せ持つ人物でも、観る人の心の奥底を引っ掻き、余韻を残していくのが北村だ。

 信右衛門は家老として明治維新という時代の大転換期に立ち会い、それまでの価値観を覆された人だ。負けた者や弱った者の目線に立つために農家になったが、今もその選択が正しかったのかと自問自答している。特に2人の娘に対しては何も残すものがないという罪悪感を抱いているようだ。りんたちに学問を教えるのは、せめてもの親の務めと思っているのではないだろうか。そんな信右衛門はりんに「一時の風に流されず己が頭で考え、行く先を決めるのが大事だ」「学ぶことはときに世を渡る翼となり、身を守る刀になる」と告げる。これは、物語全体を貫く重要なメッセージになっていくに違いない。

 ところで、朝ドラ主人公の父親は大きく2パターンに分けられる。主人公の行く末を阻むダメ親父か、主人公の人生観に良い影響を与える人格者か。そしてなぜか前者は生命力が強く、後者は早逝。信右衛門は徳が高く、それでいてどこか儚い雰囲気があるので、嫌な予感がする。願わくば前作の朝ドラ『ばけばけ』の司之介(岡部たかし)のように最後まで主人公を見守ってほしいが、果たして。

■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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