石田ひかり、永作博美、鈴木京香、鈴木保奈美 “90年代ヒロイン”が放つ実力と新たな輝き

 石田ひかり、永作博美、鈴木京香、鈴木保奈美――。この4月期のドラマでは、1990年代のドラマ界を華やかに彩り、社会現象を巻き起こしたヒロインたちが、一斉にメインキャストとして帰還を果たす。

 彼女たちは、近年のドラマでは「母親役」を好演してきた。かつて憧れたヒロインが母親として苦労し、成長する姿を見せることで、同世代の視聴者に「一緒に歳を重ねてきた」という深い連帯感を与えてきたのだ。今期は再び物語のド真ん中でスポットライトを浴びるとあって、放送前からドラマファンの期待値も高い。

石田ひかりの“狂気”と、永作博美の“自分のための人生”

『鬼女の棲む家』©中京テレビ

 『鬼女の棲む家』(中京テレビ・日本テレビ系)で主演を務める石田ひかりは、本作で新境地に挑む。近年の彼女は、『監察医 朝顔』シリーズ(フジテレビ系)や『きょうの猫村さん』(テレ東系)などで母親役を演じてきたが、今作で挑む星野明香里は、SNSでの私刑に手を染める「鬼女」という二面性を持つ主婦だ。

 これまでの「明るく穏やかでチャーミング」というイメージが土台にあるからこそ、スイッチが入った際に暴走する狂気がより一層際立つ。石田は台本を一気に読み、「非常に繊細で難しいテーマ」と語っているが、どんな狂気を見せてくれるのか。そのギャップに視聴者はクギ付けになるに違いない。

『時すでにおスシ!?』©TBS

 一方、『時すでにおスシ!?』(TBS系)で14年ぶりの民放連ドラ主演を飾るのが永作博美である。彼女もまた、NHK連続テレビ小説『舞いあがれ!』(2022年度後期)でヒロインを支え、夫の亡き後に町工場を背負って立つ母親・めぐみ役を熱演した。逆境に立ち向かう強さと、子を思う慈愛を体現した姿は記憶に新しい。

 本作で演じるのは、息子が社会人になり、家から巣立った後の「空白」に戸惑う50歳の女性だ。子育てという大きな使命を終えた実感が、鮨の世界という未知の領域へ飛び込む原動力へと変わっていく。人生の優先順位を「誰かのため」から「自分のため」へとシフトさせる過程は、多くの母親役を経験してきた永作だからこそ、説得力を持って視聴者に届くはずだ。

鈴木京香の偏屈バディと、鈴木保奈美の冷徹な知性

『未解決の女 警視庁文書捜査官 Season3』©︎テレビ朝日

 シリーズとしての安定感が光るのが、『未解決の女 警視庁文書捜査官 Season3』(テレビ朝日系)で主演を務める鈴木京香だ。NHK連続テレビ小説『おかえりモネ』(2021年度前期)では、震災の傷を抱えながらも家族を明るく照らす母・亜哉子役を演じ、時に怒ると怖い一面を見せつつも、その温かな包容力が物語の救いとなった。

 翻って、今作で演じる文字フェチ刑事・鳴海理沙は、一転して偏屈なキャラクターだ。今シーズンでは、黒島結菜が演じる「親子ほど年の離れた年下上司」を新バディに迎える。若手の成長に時に戸惑い、時に喜びながら見守る理沙の姿は、今の鈴木が放つ、慈しみ深くもどこか軽妙な空気感が絶妙な隠し味となりそうだ。

 さらに、松本若菜が主演するNHKプレミアムドラマ『対決』に出演する鈴木保奈美の存在も外せない。『わろてんか』(2017年度後期)では厳格な母親、『ちむどんどん』(2022年度前期)では浮世離れした母親など、一筋縄ではいかない女性像を朝ドラの舞台で演じてきた。

 今作では医大の理事として、松本演じる新聞記者と真っ向から敵対する。2025年配信の『スキャンダルイブ』(ABEMA)で見せた氷のような美貌と冷徹な知性が、再び牙を剥くのか。凄みを増している“有無を言わせぬ圧力”が、本作にどんな緊張感をもたらしてくれるのか楽しみである。

 主婦から刑事、組織の要職まで、彼女たちが演じる役の幅広さは、30年以上に及ぶキャリアの賜物だ。この春は、90年代ヒロインたちの「さすが」と唸らされる名演を、心ゆくまで堪能したい。

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