『風、薫る』見上愛×上坂樹里は“間違える”主人公? コロナ禍後だからこその朝ドラに

 『風、薫る』は、田中ひかる著作の『明治のナイチンゲール 大関和物語』を原案としているが、残っている資料が少なく、今回は“モデル”という形ではなく、大関和と鈴木雅という2人のトレインドナースを“モチーフ”にして、史実からは変更を加えている部分が多くなるという。

 『木村多江の、いまさらですが…』(NHK Eテレ)で特集された「明治のナイチンゲール〜風、薫る 大関和〜」を観ると、大関が道なき道を切り拓いていった壮絶な人生だったことを痛感する(※史実の大まかな流れが分かりやすく解説されているのでお勧めだ)。

 会見で吉澤と松園の2人が共通して口にしていたのは、「正しいとは何か」について。吉澤は「主人公はいつも正しいとは限らない、2人とも間違える主人公」だと話している。第1話でも、りんがあることを悔やんで「間違えた」と言うシーンや、直美が「『正しい』で生きられる幸せな人が嫌い」と、父親のような存在である吉江善作(原田泰造)に話すシーンがある。

 「間違えた時に、訂正してくれたり、間違っていると指摘してくれたりする人がいるのは心強い。その分、あまり清く、正しく、美しくなくても、生身の女性にできるかなと思っています」とコメントする吉澤は、これまでリアルな女性の生き方を描いた作品や医療ドラマを数多く手がけてきた。だからこそ、綺麗ごとではない、女性同士のきつく辛辣な会話もリアルにセリフとして表現されているのだ。

 第1週で否が応でも思い出されるのは、コロナ禍の記憶だ。明治に流行したコレラと、コロナ禍の先で生きる令和の我々とは通ずる部分がある。患者に寄り添い、今も献身的に戦い続けている看護師たちの慈愛と奉仕の精神を、私たちは讃えなければいけない。  松園は「今の看護・医療の世界で、何が正しくて、何が間違えているのかは、そう簡単ではないと思っているんです。そういった局面でどれだけ真摯に向き合っていけるか。考え続けていくことが大事だと思っていて、その視点は我々制作者としても見失わずにこのドラマで描き続けていきたい」と、永遠の問いから逃げずに真摯に向き合っていくことを表明していた。

『風、薫る』につけられたキャッチコピーは、「道をはずれた人から、いつも道は生まれた。」。また本作は「ヒロイン」ではなく、りんと直美を「主人公」と表記を統一していることも、これまでにない試みだ。日本の看護の道を切り拓いた女性2人の友情物語が、朝ドラとしての新たな道を開拓していく予感がする。

■放送情報
2026年度前期 NHK連続テレビ小説『風、薫る』
NHK総合にて、3月30日(月)放送開始
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:見上愛、上坂樹里
脚本:吉澤智子
原案:田中ひかる『明治のナイチンゲール 大関和物語』
制作統括:松園武大
プロデューサー:川口俊介
演出:佐々木善春、橋本万葉ほか
写真提供=NHK

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