『テミスの不確かな法廷』ラスト3分の衝撃 「前を向いて歩くんだぞ」に込められた思い
改めて真実を告げられ、「本当のことが知れて良かった」と涙する賢一。私たちはこれまでも、裁判のシーンで同じような涙を見てきた。安堂が不純物を取り除き、明らかにした真実によって、現実が大きく変わることはない。ましてや失われた命は戻ってこないし、犯した罪も消えはしない。だが、納得のいく真実が明らかになった時に初めて、残された人たちは前を向いて歩いていけるのだろう。
朋世のタブレットには、防犯コンサルタントの木内晴彦(矢柴俊博)が、講習に参加した高齢者の自宅に侵入し、強盗を繰り返している可能性を示す映像データが残されていた。木内の首筋には大きなアザがある。前橋一家殺人事件の真犯人は木内。そう確信している誰かが、あのコピーを裁判所に送ってきたのかもしれない。一つひとつの証拠は薄いが、これだけ複数揃えば、再審が認められる可能性はある。
そんな中、安堂に入った予期せぬ連絡。結城がホテルの駐車場で遺体となって発見された。もし木内が本当に前橋一家殺人事件の犯人だったとしたら、結城が自白を強要したことによって無実の人間が死に追いやられたことになる。それは同時に真犯人を野に放ったことを意味する。複数の人が強盗被害に遭うことも、朋世が事故死することもなかったかもしれないのだ。その責任を取り、あるいは良心の呵責に耐えられなくなり、結城は自ら命を絶ったのだろうか。しかし、まだ他殺の可能性も残されている。少なからず、結城は死の直前、山路(和久井映見)に何かを伝えようとしていた。
父親の汚名を晴らしてくれた結城に憧れ、検察官を志した古川(山崎樹範)は最後の最後まで彼の“正義”を信じていた。安堂の実父であり、検察官としての古川を生んだ父でもある結城。その2人の“息子”に顔向けできるような自分になるため、25年前の真実を明らかにしようとしていたのではないか。しかし、それが誰かにとって不都合な真実だったために、結城は何者かに消されたのではないか。こうなることがどこかでわかっていたから、安堂に「前を向いて歩くんだぞ」という言葉を残したのかもしれない。
発達障害を抱える安堂は子どもの頃、結城から「どうして普通にできないんだ」と何度も責められた。だが、安堂が安堂だったからこそ、救われた人が大勢いる。今度は前橋一家殺人事件の真相、そして父の思いを明らかにし、自分を救う番。どうかそこに、安堂が前を向いて歩き出せるような真実が隠されていますように。
■放送情報
ドラマ10『テミスの不確かな法廷』
NHK総合にて、毎週火曜22:00~22:45放送(全8回)
※毎週木曜24:35〜25:20再放送
NHK ONE(新NHKプラス)で同時・見逃し配信予定
出演:松山ケンイチ、鳴海唯、恒松祐里、山崎樹範、山田真歩、葉山奨之、小木茂光、入山法子、市川実日子、和久井映見、遠藤憲一 ほか
原作:直島翔『テミスの不確かな法廷』
脚本:浜田秀哉
音楽:jizue
演出:吉川久岳(ランプ)、山下和徳、相良健一、富澤昭文
制作統括:橋立聖史(ランプ)、神林伸太郎(NHKエンタープライズ)、渡辺悟(NHK)
写真提供=NHK