『ばけばけ』岡部たかしも仲間入り? トータス松本、北村一輝ら朝ドラ史に残るダメ親父

 『おちょやん』(2020年度後期)のテルヲ(トータス松本)は、朝ドラ史上最もハードコアなダメ親父と言っていい。「夢追い系」などという生易しい言葉では足りない、筋金入りの「働かない父親」。ほぼ無収入なのに酒浸りで、借金を膨らませ、身代金と引き換えに年端もいかない娘の千代(毎田暖乃)を奉公に出し、大人になった千代(杉咲花)を借金のカタに女郎にしようとした。その後も娘から搾取し続けた挙句、血を吐いて獄死するという衝撃的な最期を遂げる。

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 ちなみにテルヲを演じたトータス松本は、大の朝ドラフリークとして知られる。チーフプロデューサーはオファーの際、テルヲの役どころを「『おしん』の作造をイメージしてもらえば」と説明し、これを聞いたトータスは、自らに与えられた役割を即座に理解したという。

 朝ドラの金字塔『おしん』(1983年)で伊東四朗が演じたおしん(小林綾子/田中裕子/乙羽信子)の父・作造は、テルヲと双璧をなすダメ親父だ。前述の3つの分類からもはみ出す「DV親父」だった。しかし、逃げ場のない貧困生活の中、小作人として働きに働いた末に疲弊し、家族に当たることしかできなかった彼は、時代の犠牲者ともいえる。作造の生き様は、明治の貧村の酷烈さを象徴していた。

 時代に翻弄されたダメ親父といえば、『カーネーション』(2011年度後期)の善作(小林薫)もそのひとり。外面だけが良い内弁慶。小心者で酒呑みで、娘の糸子(尾野真千子)にもすぐ手が出る。善作は呉服屋を営んでいたが、商売下手に人々の需要が着物から洋服へと移り変わる時代の波も相まって、何もかもがうまく回らない。「家長の面子」を保つことができなかった善作は、家父長制の時代からはじき出された存在といえる。

 そのうえ善作は、自らの衰えと反比例するように、洋裁師としてめきめき成長していく糸子の商才を目の当たりにすることとなる。劣等感とプライドと、娘への愛情が複雑にもつれた善作の屈折を、名優・小林薫が見事に演じ切った。

 『カーネーション』に負けず劣らず、ダメ親父と娘の密度の濃い関係性を描いた朝ドラとして『スカーレット』(2019年後期)も忘れがたい。主人公・喜美子(戸田恵梨香)の父・常治(北村一輝)は酒に酔っては娘を怒鳴り、ちゃぶ台をひっくり返す頑固親父。山っ気が強いのに商才がなく、気づけば多額の借金を抱えていた。

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 貧窮から娘を高校に行かせてやれず、独断で喜美子の大阪の働き口を決めたり、貯金して美術学校に通いたいという喜美子の夢を妨げて信楽に呼び戻したりと、いつでも自分勝手。常に娘の前に立ちはだかる障壁だった。しかしこうした常治の行動が思いがけず、喜美子を陶芸家の道へと導いていたのだ。やがて喜美子が極めていく、喜美子だけの芸術の根本をたどると、そこには常治の存在があった。

 こうして朝ドラに登場した色とりどりのダメ親父たちを振り返ってみると、「司之介なんてまだかわいいもの」と思えてくるから不思議だ。『ばけばけ』も物語は終盤に差し掛かった。はたして司之介は最終回までおとなしくしているのか、それともまた何かやらかすのか。そんなところにも注目したい。

■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
NHK BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
NHK BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK

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