『ばけばけ』が描く2人のヒロインの明暗 シンデレラのその後にある“リアルな残酷”
連続テレビ小説『ばけばけ』(NHK総合)は、年越しを挟んで後半に入った。前半では、ヒロイン・松野トキ(髙石あかり)の生い立ち、婿取りをめぐる騒動、そしてレフカダ・ヘブン(トミー・バストウ)の女中となり、「怪談」を介して心を通わせる過程が描かれた。
もともとのヘブンは、異国から来たこともあってか、孤独で偏屈、いつもイライラとしている神経質な人物だった。一方のトキは、武士の娘として教養を身につけながらも、家族の作った借金に追われ、疲弊しきった日々を送っていた。せっかくもらった婿にも逃げられ、絶望するような場面もあった。しかし、トキはヘブンといつしかソウルメイトのように惹かれ合って、ついに夫婦となる。女中としてもらっていた20円の給金はどうなるのかといった問題もあったが、結果的には、20円どころか、トキの家族や生家の雨清水家の分まで含め、生活費はすべてヘブンが賄うことになる。
このあたりで、筆者は「なんだかおもしろくないな」という思いが湧いてきた。これではまるで、「シンデレラはいつまでも幸せに暮らしましたとさ」ではないか。結婚後、ヘブンの偏屈さはすっかり和らぎ、トキのことが好きでたまらない様子。トキにキスをせがむなど、「観ているこちらが恥ずかしい」状態で、まるで惚気を見せられているようだ。新居は広く立派な武家屋敷になり、両親も当然のように同居する。着物は新調され、料理人を呼んで西洋式のホームパーティーまで開く。かつてどん底にいた松野一家が、見る見るうちに成り上がっていく。「何も起こらない日常を描く」と脚本のふじきみつ彦はたびたび語っているが、さすがに「幸せな奥様の日常」をみせられるばかりでは、なんだか「もやもや」してしまう。
だが、「お姫様のハッピーエンド」ではもちろん終わらなかった。後半は、いわば「シンデレラのその後のストーリー」だ。トキは玉の輿に乗った女性として、町中の好奇の目にさらされる。実はそれこそが、ヘブンが来日以来ずっと味わってきた立場でもあった。新聞にはヘブン家の日報まで掲載され、二人の暮らしは瞬く間に町中に知れ渡る。トキは一躍スターとなり、変装しなければ町も歩けないほどだ。