“柄本兄弟”がNHKドラマで重宝される理由 『ばけばけ』『光る君へ』などで存在感放つ

一方、兄の佑は、より物語の核心に近い場所で存在感を発揮してきた。朝ドラ『あさが来た』(2015年度後期)で演じた眉山惣兵衛は、その代表例だろう。時代の価値観を背負いながら、不器用に家族と向き合う姿は、視聴者に強い印象を残した。佑の芝居の魅力は、感情を過剰に説明しない点にある。視線や間、佇まいの変化だけで、人物の内面を伝えてくる。その積み重ねが、NHKドラマの重厚な語り口とよく噛み合ってきた。
朝ドラ『ゲゲゲの女房』(2010年度前期)で柄本佑が演じた菅井伸は、水木しげるの職場に出入りするアシスタントで、現場の空気や人間関係を視聴者に伝える役だった。佑の芝居が効いていたのは、菅井を“便利な助っ人”ではなく、焦りや弱さも抱えながら仕事を続ける一人の人間として成立させていた点だ。『なつぞら』(2019年度前期)の倉田隆一も同じで、主人公になつに正解を与える先生ではなく、少し引っかかる言葉を残して考えさせる存在だった。主役の成長が説教くさくならず、試行錯誤に見えるのは、こうした人物がちゃんと現実の人として置かれているからである。
柄本佑、『光る君へ』最終回にふさわしい圧巻の演技 変化し続けたまひろと道長の関係性
吉高由里子主演の大河ドラマ『光る君へ』(NHK総合)。公式サイト内には出演者の撮影現場からのコメントが聞けるキャストインタビュー…近年では、大河ドラマ『光る君へ』(2024年)での藤原道長役が象徴的だ。権力者としての強さだけでなく、揺らぎや弱さも含めて描かれた道長像は、佑の持つ生々しさによって立体的に描かれていた。決して英雄的に描かれないからこそ、視聴者は目を離せなくなる。派手なカリスマではなく、感情の揺れを抱えたひとりの人間として、歴史上の人物を現在に引き寄せた。そのバランス感覚こそ、NHKドラマにおいて重宝されてきた理由だろう。

柄本佑と柄本時生は、決して同じタイプの俳優ではない。しかし共通しているのは、出番の大小に関係なく場面を成立させる力だ。主役が輝くための土台を整えつつ、自分の役にもきちんと手触りを残す。その積み重ねが、大河や朝ドラのように長く続くドラマで、制作側にも視聴者にも信頼されてきた理由なのだと思う。
だからこそ筆者を含め、視聴者は、2人が画面に現れた瞬間、無意識のうちに「この作品は大丈夫だ」と感じてしまうのかもしれない。柄本兄弟がNHK大河ドラマ・朝ドラに愛され続ける理由は、その確かな安心感と、静かに心を揺らす表現力にある。
■放送情報
2025年度後期 NHK連続テレビ小説『ばけばけ』
NHK総合にて、毎週月曜から金曜8:00~8:15放送/毎週月曜~金曜12:45~13:00再放送
BSプレミアムにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜8:15~9:30再放送
BS4Kにて、毎週月曜から金曜7:30~7:45放送/毎週土曜10:15~11:30再放送
出演:髙石あかり、トミー・バストウ、吉沢亮、岡部たかし、池脇千鶴、小日向文世、寛一郎、円井わん、さとうほなみ、佐野史郎、北川景子、シャーロット・ケイト・フォックス
作:ふじきみつ彦
音楽:牛尾憲輔
主題歌:ハンバート ハンバート「笑ったり転んだり」
制作統括:橋爪國臣
プロデューサー:田島彰洋、鈴木航、田中陽児、川野秀昭
演出:村橋直樹、泉並敬眞、松岡一史
写真提供=NHK






















