『死亡遊戯で飯を食う。』独自の演出“オッドモノローグ”を紐解く ラノベ原作の特異点
大作溢れる2026冬アニメで、筆者がそのクオリティからもっとも注目している作品が『死亡遊戯で飯を食う。』(以下、『死亡遊戯』)だ。
原作はMF文庫Jより刊行中の鵜飼有志のライトノベルで、高額な賞金の代わりに命の危険があるゲームを生業とし、そこで99回クリアという異質な目標を持った主人公・幽鬼の姿を描く変則的なデスゲーム作品である。
アニメ版の監督を務める上野壮大は、前作『義妹生活』で上質で邦画的なフィルムを手がけ、多くのアニメファンの心に爪痕を残した演出家だ。
そんな上野監督の新作としての期待を裏切ることなく、先日放送された『死亡遊戯』第1話は特にデスゲームの残酷さが際立ち視聴者を選ぶものの、やはり演出は圧巻というべき出来栄えであった。
レイアウトの美麗さやシネスコを駆使したデスゲームの緊張感と不気味さの表現、『〈物語〉シリーズ』を想起させるチャプター番号による場面転換、走馬灯で展開される実写映像、平穏なシーンで展開された単色背景に複数のコマ状の小窓を配置するシャフト的な技法などなど、演出的な長所は枚挙にいとまがない。(ちなみに『死亡遊戯』と同じスタジオディーン制作の『桜Trick』は『ひだまりスケッチ』の演出で活躍した石倉賢一が監督を務めており、『死亡遊戯』はシャフトの遠縁にあたるといえるかもしれない)。
数々の演出が光る本作の中でも特に印象的だったのは、カメラとの距離に応じたキャラクター描写の変化だろう。
ライトノベルのアニメ化としての表現と瞳へのこだわり
引きのロングショットでは主線も顔の描き込みもない色彩による描写が、寄りのアップショットにおいては非常に高密度な瞳の描写がなされる独特の使い分けは他のアニメには見られず、『死亡遊戯』の特徴として挙げられる。
これらの作画の使い分けに関して、先行上映のトークショー(「TVアニメ『死亡遊戯で飯を食う。』第1話 世界最速上映会」)にてそのこだわりが言及されていた。
情報量が極端に制御されたキャラクターの作画は、距離や重要度に応じて決定されて、情報量が多いほうから順に、S,A,B,Cと等級が分けられている。
あえて情報量を落としたC作画は、表情を見せずに、想像の余地を残すことで小説をアニメ化する際にありがちな語りすぎを避ける狙いがあるのだという。確かに、表情を映さずに進む会話劇において、視聴者はセリフをその字面通り素直に受け取れるべきか考え、本心を探ることを要請されるため、自然に想像力を働かせる。上野監督の前作『義妹生活』にも表れていた余白を重んじる演出の一環として捉えられるだろう。
ライトノベルにおける文章をC作画とするのならば、S作画の高密度なキャラクター描写はライトノベルにおけるイラストの部分に当たるといえる。
S作画の象徴ともいえる瞳は、原作のイラストを手がけるねこめたるの質感を表現すべく試行錯誤を重ね、最終的に鉱石の顕微鏡写真を貼り込む独自の手法を確立したという。
さらに貼り込みのために瞳だけで4レイヤーを用いるほどの手間をかけているといい、そのような労力をかけることでライトノベルのカラーイラストに劣らない、宇宙のような引き込まれるデザインが成立しているのだ。
このように、情報量を落とし視聴者に想像を促す作画とこだわり抜いた美しい作画の両者を使い分けることによって、ライトノベルという「読者に情景をイメージさせる文章」と「視覚的に魅了するイラスト」の2つを併せ持つメディアの特性をアニメに落とし込んでいるのである。他のライトノベルのアニメ化では見られない、見事なアダプテーションが実現されている。