『119』とセット観たい清野菜名出演作4選 『東京無国籍少女』『トットちゃん!』など
スペシャルドラマ『119 エマージェンシーコール 2026 Yokohama Blackout』が1月3日21時30分よりフジテレビ系で放送される。
大みそかの横浜を舞台にしたスペシャルドラマでは、連続ドラマ以上の規模で、指令管制員たちの現場が描かれる。彼らが頼れるのは、通報者の声だけ。電話の相手は、落ち着いて状況を説明できるとは限らない。泣きじゃくる声、怒鳴り声、言葉にならない沈黙――その断片からいま何が起きているかを読み取り、救急車や消防車を最速で動かしていく。『119』が映し出すのは、派手なヒーローが活躍する物語ではない。名前も知られない誰かの命を守るために、見えない場所で判断を積み重ねる人たちの仕事の凄みである。
その最前線に立つ主人公・粕原雪を演じるのが清野菜名だ。アクションで培った身体の強さ、実在人物を演じてきた説得力、ラブストーリーで磨いた繊細な間合い。ジャンルを横断して積み上げてきた経験が、『119』の声で救う物語にそのまま活きている。連続ドラマで雪は、通報者の言葉だけでなく、電話の向こうに混ざる小さな音からも状況を読み解いていく。象徴的だったのが第6話。車内で出産が始まるという緊急事態で、雪は姿の見えない相手に落ち着いて声をかけ、必要な指示を一つずつ積み重ねていった。派手なアクションではないのに、声のトーンと間の取り方だけで緊迫感を作り、視聴者まで息を詰めさせるという清野菜名の強みが最もはっきり出た場面だった。
本稿ではスペシャルドラマ放送にあわせて改めて観たい清野菜名の出演作4本を振り返りたい。
『東京無国籍少女』
清野の存在を一気に知らしめた作品の一つが、押井守総監督の映画『東京無国籍少女』だ。閉塞した日常の中で追い詰められていく少女が、ある瞬間から自分を取り戻していく物語で、清野は主演に抜擢された。押井が評価したのは、彼女が持つ殺気だ。かわいらしさだけではない、目つきひとつで空気を変えられる俳優として見出されていたことがわかる。
この作品で強烈なのは、清野の眼差しの演技である。藍は多くを語らない。説明よりも先に、黙り込む時間や、息を殺す瞬間、相手をじっと見据える間が、不穏さを積み上げていく。そして、その静けさが破れたとき、身体が一気に動き出す。アクションのキレも見どころだが、いちばん印象に残るのは、動き出す直前の止まり方。視線、肩の力、重心の置き方に至るまで緩急がお見事だ。一瞬の“ため”があるからこそ、藍が抱え込んだ緊張が限界を越えたときの動きに、逃げ場のない説得力が宿っている。
『トットちゃん!』
2017年放送のドラマ『トットちゃん!』(テレビ朝日系)で清野が挑んだのは、黒柳徹子の若き日だった。実在人物を演じるときに難しいのは、見た目や口調をなぞるだけでは“それっぽい”で終わってしまうことだ。視聴者が観たいのは、その人のクセの再現ではなく、なぜその話し方になるのかという内側の理由まで含めた説得力である。
清野が上手なのは、そこを声の出し方で伝える点にある。たとえば、テンションが上がって早口になってしまうときの息の乱れ、思いついた言葉が次々に口から飛び出してしまうテンポ、失敗したあとに一瞬だけ黙って目が泳ぐ間。そうした細部で、単なる“黒柳徹子っぽさ”ではなく、夢に向かって突っ走りながらも不安や照れが混ざる、若いトットちゃんの人間味を立ち上げていった。テンポの良さが可笑しさに転び、ふとした沈黙が切なさを残す。声のトーンと間の置き方だけで場の空気を変えてしまうのを観ると、清野の演技の巧さがよくわかる。